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私が助産師として医療現場にいた頃、「ケア」は“与えるもの”という意識が強くありました。
しかし、社会起業家として福祉・教育・医療を横断する活動を続ける中で見えてきたのは、「ケアは一方向ではなく、共有できる価値」であるという新しい構造です。
いま世界では、共感経済(Empathy Economy)という考え方が注目されています。
それは、感情や関係性といった“人の温度”が経済の価値そのものになる時代。
本稿では、「ケアを共有する社会」への転換がどのように共感経済を進化させ、福祉・企業・地域・個人の未来をつくるのかを考えてみたいと思います。
「ケア」は“サービス”ではなく“関係性”
多くの社会システムは、長い間「ケア=提供するもの」と定義してきました。
医療や福祉では“支援する側”と“される側”が明確に分かれ、そこに上下関係が生まれていたのです。
しかし、現代社会におけるケアは、もはやサービス提供ではなく「関係性を築く行為」。
“支えること”と“支えられること”が循環し、双方向の価値が生まれる時代に入っています。
“共感経済”が示す新しい価値基準
共感経済とは、単に「優しさをお金に変える」仕組みではありません。
それは、「共感によってつながる人々の信頼」が経済活動の基盤になるという考え方です。
SNSでの発信、コミュニティ、クラウドファンディングなど、共感を軸に動く経済はすでに実在しています。
つまり、感情が経済を動かすフェーズに、私たちは確実に足を踏み入れているのです。
ケアの“再定義”がもたらす社会イノベーション
介護・医療・教育・福祉といった分野では、今こそ「ケアの再定義」が求められています。
ケアを“効率化”するだけでは限界があります。
AIやテクノロジーを活用しながらも、人間が担うべき「共感・理解・つながり」の部分に新しい価値を見出すこと。
この発想の転換こそが、社会イノベーションの出発点になるのです。
“ケアを共有する社会”とは何か
“ケアを共有する社会”とは、誰かの課題を「自分ごと」として感じ取れる社会のことです。
子育て、介護、障がい、孤独――これらを特定の人だけの問題にせず、社会全体で受け止め、支え合う構造をつくる。
そこには、行政や企業の施策だけではなく、市民同士の関係性が経済循環を生む可能性があります。
企業の「共感経営」が支える未来
企業もまた、“利益中心”から“共感中心”へと変化しています。
従業員のウェルビーイング、顧客とのストーリーテリング、社会的課題への参画――
これらはもはやCSRではなく、「共感資産」として経営戦略に組み込む時代。
「共感経済」を動かすプレイヤーとして、企業の姿勢が問われています。
地域コミュニティは“共感経済”の実験場
地域には、ケアを共有する小さな経済圏が数多く生まれています。
たとえば、子育てシェアや食のコミュニティ、地域通貨など。
お金のやり取りを超えた「信頼」「支え合い」「共助の仕組み」は、共感経済のリアルな形です。
これらを可視化し、持続可能なモデルとして広げていくことが、次世代社会の鍵になるでしょう。
テクノロジーが“共感”を支える時代へ
AIやデジタルプラットフォームは、冷たい技術ではなく「共感をつなぐツール」として進化しています。
ケア記録の共有、感情データの可視化、オンラインコミュニティの最適化など、
テクノロジーが“ケアの共有”を支える基盤になりつつあります。
テクノロジーと感情が共鳴する時代、それこそが共感経済の進化系なのです。
“ケアの共有”が生み出す希望の循環
ケアを共有する社会では、誰かの痛みや喜びが社会の資源になります。
それは「助け合い」ではなく、「共に生きる」ことそのもの。
共感が経済を動かし、経済が再び共感を生む――
そんな希望の循環こそ、次の時代の豊かさの指標なのだと思います。
