ビジネス・SNS

教育現場から見るジェンダー平等のリアルな壁

教育現場から見るジェンダー平等のリアルな壁
大阪府 仁蓉まよ 教育現場から見るジェンダー平等のリアルな壁

私はこれまで、医療・福祉・企業・行政・教育の現場を横断しながら、女性のキャリア支援や意思決定支援に関わってきました。
その中で最も根深いと感じるのが、「教育現場におけるジェンダー平等の壁」です。
ジェンダー教育という言葉は広く知られるようになりましたが、現場ではまだ「意識」「制度」「環境」の3つの壁が存在しています。
本稿では、教育という社会の土台から見たジェンダー平等の課題と、次世代の意思決定力を育てるための戦略を考えていきます。

無意識の「ジェンダーバイアス」が学びを制限している

仁蓉まよ

小学校や中学校の授業の中で、男女の役割を無意識に分けてしまう場面は今も多く見られます。
たとえば理科の実験で男子が「主導」、女子が「記録係」を担うケースや、家庭科・技術の選択科目で固定観念が働くケースなど。
これは教師の悪意ではなく、社会に染み付いた「無意識のジェンダーバイアス(性別による無意識の偏り)」の反映なのです。
その積み重ねが、「自分には向いていないかもしれない」「得意ではない」といった思い込みを生み、進路選択や職業意識にも影響していきます。

教育現場の男女比が「ロールモデルの多様性」を妨げる

仁蓉まよ

教育現場そのものの構造にも偏りがあります。
たとえば小学校では女性教員が多数を占める一方で、管理職や大学教員になると男性の割合が急増します。
「先生=女性」「校長=男性」といった構図は、子どもたちの意識形成にも影響を及ぼします。
多様なロールモデルが存在しないことは、「自分もなれるかもしれない」という想像力を奪うことと同義なのです。

教科書とカリキュラムに潜む構造的な偏り

仁蓉まよ

教育の内容そのものにも、性別の偏りが存在します。
たとえば教科書に登場する偉人・科学者・政治家の多くが男性であること、また家庭・育児に関する描写が女性中心で描かれること。
このような表現の蓄積が、「社会の主役は男性である」という前提を子どもたちに無意識のうちに刷り込んでしまいます。
カリキュラム設計の段階で、性別の多様性やジェンダー視点を意識的に取り入れることが求められています。

保護者・地域社会の「文化的固定観念」

仁蓉まよ

教育は学校だけで完結しません。
保護者の価値観や地域社会の文化も、子どものジェンダー意識に大きな影響を与えます。
「女の子なんだから」「男の子なんだから」という言葉が、いまだに家庭や地域の中で日常的に使われている現実があります。
教育現場がいくら改革を試みても、家庭教育の価値観が変わらなければ、平等の実現は難しいのです。

「ジェンダー教育」は“特別な授業”ではない

仁蓉まよ

ジェンダー教育というと、「特別な授業」や「性教育の一部」として扱われることが多いのですが、実際はそうではありません。
本来のジェンダー教育とは、「多様性を理解し、自分と他者を尊重する力」を育てる全人格教育の一部なのです。
算数でも理科でも国語でも、どの教科にもジェンダー視点は存在します。
それを日常の中でどう自然に組み込むかが、教育の質を左右する時代に入っています。

教員研修と学校組織の“ジェンダー感度”を高める

仁蓉まよ

制度改革の前に、まず現場の意識改革が必要です。
教員がジェンダー視点を持たないまま教育を行うと、無意識の偏りが再生産されてしまいます。
文部科学省のガイドラインだけでなく、学校単位での研修やディスカッションを通して「気づき」を育てることが欠かせません。
また、学校運営や意思決定の場に女性教員がより多く関わることで、組織の多様性が広がります。

子どもたちが「自分で選べる社会」を育てる教育へ

仁蓉まよ

最終的な目標は、男女の数を均等にすることではありません。
「どんな性別であっても、自分で選び取れる社会」を育てることです。
そのためには、子どもたち一人ひとりが“自分の意思で選択できる力”を身につける教育が必要です。
それこそが、ジェンダー平等教育の本質であり、未来の社会変革の基盤になるのです。

教育は“社会の鏡”であり、未来の設計図である

仁蓉まよ

教育は社会の反映であると同時に、未来を設計する力でもあります。
つまり、教育現場のジェンダー平等を進めることは、社会全体の構造を変えることに直結しています。
制度の改革だけでなく、日常の一つひとつの言葉や態度の中にこそ、変革の芽がある。
“気づく力”と“問い続ける姿勢”を育てることが、次の世代にとって最も重要な教育なのです。

関連記事

女性と年金制度設計 ―「長く生きる性」が背負うリスク構造―

ビジネス・SNS 2026年2月26日 12:06 41

女性と税制設計――再分配の再構築

ビジネス・SNS 2026年2月25日 11:12 82

回復したあと、どう社会とつながり直すか

ビジネス・SNS 2026年2月24日 11:40 106

支援のKPI——“善意”を制度に変える設計図

ビジネス・SNS 2026年2月21日 11:09 237

女性が権力を持つときの倫理

ビジネス・SNS 2026年2月20日 13:21 262

欲望を語れない社会で、恋愛は戦略を失う

ビジネス・SNS 2026年2月18日 11:13 361

女性の身体コストは“見えない経営損失”

ビジネス・SNS 2026年2月17日 11:48 366

恋愛と信用——“選べない関係性”の正体

ビジネス・SNS 2026年2月19日 11:38 392

壊れないキャリア設計の新常識

ビジネス・SNS 2026年2月16日 11:06 452

慢性痛は“自己管理不足”ではない ー見えない身体搾取の構造ー

ビジネス・SNS 2026年2月13日 13:52 519

支援を“交渉力”に変える時代

ビジネス・SNS 2026年2月12日 11:41 566

「それでも支援を信じられなくなった女性たちへ」 ― 希望の言葉が届かなくなった場所から考える ―

ビジネス・SNS 2026年2月9日 11:25 647

もう社会を変えたいと思えなくなった女性たちへ

ビジネス・SNS 2026年2月10日 11:47 661

支援されてきた女性が、誰かを追い詰めるとき ――当事者の“加害性”と無意識の再生産

ビジネス・SNS 2026年2月6日 13:58 797

支援はなぜ、人を追い詰めてしまうのか

ビジネス・SNS 2026年2月4日 11:19 824

回復した女性が社会に戻るとき、なぜ摩擦が生まれるのか

ビジネス・SNS 2026年2月5日 11:15 832

回復期の女性が「怠け者」に見える社会

ビジネス・SNS 2026年2月3日 11:23 879

女性はどこで「もう頑張れない身体」になるのか ― 感情ではなく“身体の限界値”から人生を設計し直す ―

ビジネス・SNS 2026年2月2日 12:00 946

賃金格差は“能力差”ではなく設計差で生まれる

ビジネス・SNS 2026年1月30日 12:04 1023