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仁蓉まよです。
私は助産師として臨床現場に立ちながら、女性のキャリア形成や福祉事業、企業・行政との連携プロジェクトに携わってまいりました。その中で痛感するのは、女性がキャリアの中で直面する“揺らぎ”――体調・家族・メンタル・働き方の変化など――は、個人の努力だけでは乗り越えられないという事実です。
今回のコラムでは、女性がキャリアの途上で力を取り戻すために必要な「キャリア回復力(レジリエンス)」を、個人の性質ではなく“環境設計”として捉える視点についてお話ししたいと思います。
キャリアの揺らぎは「例外」ではなく「前提」
助産師として多くの女性に関わってきた経験から、人生におけるキャリアの揺らぎは誰にでも訪れる“前提条件”だと感じています。ホルモン変動、妊娠・出産、介護、職場環境の変化、メンタルの波――これらは「個人の弱さ」ではありません。人生の自然な流れなのです。にもかかわらず、日本ではまだ“予定外の変化”として捉えられ、女性自身が必要以上に自責感を抱く傾向があります。
個人の頑張りに依存する時代は終わった
キャリアの回復力を語るとき、「もっと頑張る」「気持ちを切り替える」といった精神論が強調されがちです。しかし、私が福祉現場や医療現場で見てきたのは、環境のつくり方ひとつで女性は驚くほど立ち直り方が変わるということ。働き方の柔軟性、サポート体制、相談できる関係性――これらが揃ったとき、女性は本来持つ力を存分に発揮できます。
“キャリアの余白”は回復力の源になる
私は以前から「余白は戦略資産である」とお伝えしてきましたが、余白はキャリア回復力にも直結します。スケジュールに余白があると、判断力・体力・創造力が最適化され、揺らぎが生じたときに踏ん張る力が育ちます。“予定を詰め込む=努力”と捉える価値観は、そろそろ手放すべきなのです。
身体とキャリアは常に連動している
助産師として医療現場に携わる中で、「身体の状態が意思決定を左右する」場面を数え切れないほど見てきました。睡眠、栄養、ホルモンバランス、慢性疾患の有無は、すべてキャリアの持続力に影響します。キャリア支援の場で身体の話をすることはまだ一般的ではありませんが、本来は両者を切り離して考えることのほうが不自然なのです。
組織がデザインできる“回復しやすい環境”
企業や自治体が取り組める施策の中にも、キャリア回復力を高める視点が求められています。
・柔軟な勤務体系
・メンタルヘルスの早期相談窓口
・ホルモン変動への理解促進
・ライフイベントに応じた役割再設計
個人に“がんばらせない仕組み”をつくることこそ、持続可能な人材戦略といえるのです。
コミュニティは“回復力の外部資源”になる
女性支援の現場にいると、同じ課題を共有できるコミュニティがどれほど力になるかを実感します。孤立感が和らぎ、情報にアクセスでき、選択肢が広がる。これは心理的支えであるだけでなく、実際のキャリア行動を後押しする“経済資産”でもあります。
感情を“扱える”ことは回復力の一部である
AI時代において、感情知性(EI)は女性が持つ大きな強みです。しかし、キャリアの揺らぎの中で最も乱れるのもまた“感情”です。落ち込む、焦る、自分を責める――これらの状態は決して弱さではなく、適切に扱えば前進のヒントになります。感情を観察し、言語化し、必要な支援へつなげるプロセスこそが、回復力を底上げするのです。
キャリア回復力は「ひとりで育てるもの」ではない
キャリア回復力というと個人の能力のように捉えられがちですが、本来は“社会的に育てる資産”です。家庭、職場、地域、制度、コミュニティ――複数の環境が女性の背中を支えたとき、人生の選択肢は広がります。揺らいでも戻ってこられる環境が整えば、女性はもっと自由に挑戦し、もっと自分らしいキャリアを描けるようになるのです。
