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私は、助産師として“命の現場”に立ちながら、福祉・医療・キャリア支援・不動産事業まで多様な分野に関わってきました。
その中で強く感じるのは、「家族のかたち」が変わるスピードの速さです。
結婚・出産を選ばない人が増える一方で、“孤立”を防ぎながら支え合う新しいつながりが求められています。
本稿では、「非婚社会」における新しい“ケアの仕組み”を、社会的・経済的視点から考察します
「非婚=孤立」ではない時代へ
これまでの社会は、「家族」という単位を前提に支援制度や福祉サービスを設計してきました。
しかし今、単身者やパートナーシップを持たない生き方は特別な選択ではなく、一般的なライフスタイルになりつつあります。
“非婚=孤立”という構図は、もはや過去のもの。
むしろ、「選ばない自由」を前提にした新しい共助の形が、静かに広がり始めているのです。
血縁を超えた“ケアの再設計”
ケアとは、医療や介護に限らず「互いの生活を支える仕組み」そのものです。
家族に依存せず、友人・地域・オンラインコミュニティなど多層的なネットワークで支え合う。
それは、“ケアの再設計”ともいえる動きです。
たとえば、ルームシェア型の住まいや、ケア付きコレクティブハウス、オンラインの「ケア仲間」など、血縁を超えた助け合いが増えています。
「ケアを共有する」経済モデル
この流れの中で注目されているのが、「ケアシェアリング」という考え方です。
一人では抱えきれない育児・介護・心のケアを、コミュニティ全体で支え合う。
その仕組みには、地域ポイント制度やケア時間の交換、オンラインマッチングなど、経済活動としての可能性が広がっています。
“ケアを共有する”ことが、社会的孤立を防ぎ、同時に新しい雇用と循環を生み出しているのです。
住まいが「ケアの拠点」になる
不動産事業に携わる立場から見ると、非婚社会では「住まい」が最も重要な社会基盤になります。
個人のプライバシーを守りながら、必要なときにケアが届く仕組み。
シェアハウス、コミュニティ型賃貸、福祉住宅などの設計は、単なる居住空間ではなく“支え合いのプラットフォーム”へと変化しています。
“住まい=ケア”という発想こそ、これからの都市戦略に欠かせない視点です。
行政と企業の役割は「共助のデザイン」
行政や企業が果たすべき役割は、「支援の提供者」ではなく、「共助のデザイナー」へと変化しています。
民間のリソースを活用した地域連携、企業の福利厚生を拡張した“ケアコミュニティ制度”など、官民連携の新しい形が求められます。
個人を“消費者”としてではなく、“共に支え合う担い手”として位置づける発想が、社会の持続可能性を高めるのです。
「ケアを依存ではなく選択に変える」社会へ
ケアという言葉には、どこか「弱さ」や「受け身」のイメージがつきまといます。
しかし本来、ケアは“人が人とつながる力”であり、“生きる選択の自由”を支えるものです。
依存ではなく、選択。
助けられること、助けることを、自分の意思でデザインできる社会こそが、非婚時代の理想的な共生モデルなのです。
女性が担う「ケア経済」の中心
非婚社会の中で、女性たちは新しいケア経済の担い手になっています。
看護・介護・教育・地域活動などで培ってきた“共感力”と“実践力”が、社会の支え合い構造を再構築しているのです。
この分野で女性が主導権を持つことは、単なる福祉の延長ではなく、社会を動かす“経済戦略”でもあります。
“共に生きる経済”が未来をつくる
血縁や結婚という枠を超えて、誰もが自分らしく支え合える社会。
それは「ケアを共有する社会」であり、同時に“共に生きる経済”の誕生でもあります。
非婚社会を悲観ではなく、希望として捉えること。
その視点の転換こそが、次の時代の社会デザインの核心なのです。
