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私が助産師として医療現場に立ち、さらに福祉事業・PR・ブランド戦略・女性支援に携わる中で痛感するのは、「女性の能力は、組織の評価制度では可視化されづらい」という現実です。
これは個人の努力不足でも、企業の悪意でもありません。**“制度の設計思想そのものが、女性の強みを測るようにつくられていない”**という構造的な問題なのです。
本稿では、女性が評価されにくい理由、そして人事制度が見落としている“見えないキャリア資産”についてお伝えいたします。
女性の強みが「評価項目」に存在していない
人事制度は往々にして、定量的な成果・数字・短期スパンのアウトプットを重視します。
しかし女性が発揮する力は、チーム全体の調整力、関係性構築、ケア視点、予防的なリスク管理など、長期的な組織の安定を支える力が多い傾向にあります。
それらは利益の数字にはすぐ現れません。ゆえに評価項目として定義されづらく、本人がどれだけ貢献していても“見えない成果”として扱われてしまうのです。
“気づく力”は組織を支える重要な資産である
女性は、観察力・共感力・環境感知力が高い方が多く、この「気づく力」は医療現場でもビジネスでも最も重宝される能力のひとつです。
新人のメンタル変調、業務のほころび、顧客の小さな変化を察知し、問題に発展する前に介入する。
これは**“損失を未然に防ぐ投資”**ですが、従来の人事制度では評価されにくい。
私はこの力こそ、次世代の組織運営で最も価値のある資産になると考えています。
“非公式業務”が女性に偏りがちな理由
職場で「ちょっとこれお願い」「場を和ませて」「新人のケアをしてあげて」と頼まれるのは、女性が多い傾向にあります。
これらは**「インフォーマル・ラボー(非公式労働)」**と呼ばれますが、評価制度に載らないのに組織の機能を維持する重要な仕事です。
本来は正式な業務として再設計し、評価と報酬に反映すべき領域なのです。
“共感力の高いリーダー”が評価されない矛盾
女性管理職を支援していると、「成果は出しているのに、リーダーとしての評価が伸びない」という相談が非常に多いです。
これは、従来のリーダー像が“指示型”“成果主義型”に偏っているためです。
実際には、変化の多い現代組織で求められるのは、傾聴・調整・対話・巻き込みといった共感知性型スキル。
女性が得意とする領域こそ、これからの組織の競争力を左右する要素なのです。
ライフイベントを“弱み”と捉える人事制度の限界
妊娠・出産・介護・治療など、女性が担う可能性の高いライフイベントは、評価制度の中で“ブランク”“機会損失”として扱われることがあります。
しかし私は、これらの経験を経た女性が持つ、**意思決定力・マルチタスク力・レジリエンス(回復力)**は、むしろ組織にとって価値の高い能力だと感じています。
ライフイベントを“キャリア資産”として再評価する視点が、今こそ必要なのです。
共感・ケア・調整は“定量化できるスキル”になる
これまで“感覚的”とされていた女性の得意分野は、AIやデータ技術の進化によって可視化され始めています。
コミュニケーションの質、エンゲージメント向上、離職防止への貢献度などは、もはや数値化が可能です。
つまり、女性が発揮してきた見えない力は、測定可能な業績の一部になりつつあるのです。
この流れは、今後の評価制度を大きく変えるでしょう。
企業が再定義すべき“女性のキャリア資産”とは
私が企業・行政の支援に入る際、必ず提案するのは次の3点です。
●ケア・調整・関係性構築スキルの評価項目化
●非公式業務の正式業務化と報酬設計
●ライフイベント経験のキャリア資産化
これらを導入するだけで、女性の活躍度は劇的に変わり、組織全体の生産性も向上します。
女性が“評価される側”から“評価をデザインする側”へ
評価されない構造を変えるには、女性自身が声を上げ、仕組みを創る側に回ることが重要です。
起業・副業・社内プロジェクトへの参画・政策提言……方法はいくつもあります。
女性のキャリアは、もはや“制度に合わせる”ものではなく、制度そのものを変える力を持つ時代に入りました。
評価されない現実は、女性の価値が低いのではなく、制度の方が時代に追いついていないだけなのです。
