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私が助産師として現場に立ち続けてきた中で、そして起業家としてビジネスの交渉の最前線に立ってきた中で、強く感じていることがあります。
それは、女性の人生を支える最後の砦は「交渉力」だということなのです。
交渉というと、ビジネスの場だけを想像される方が多いかもしれません。
けれど、実際には医療説明、職場での条件提示、家事育児の分担、パートナーとの将来設計、福祉制度の活用まで――交渉は日常のあらゆる意思決定に存在しています。
本稿では、女性が「交渉力」を持つことの社会的意義と、キャリア・人生戦略としての必要性をお伝えいたします。
“遠慮の文化”は女性のキャリアを遅らせる
日本社会には、「空気を読む」「我慢する」「相手に合わせる」といった価値観が根強くあります。
とくに女性は、その役割を期待されることが多く、無意識のうちに自己主張を控える行動パターンを学習してしまいます。
しかし、キャリアや人生設計において必要なのは、
「自分はどう生きたいか」を明確に伝える力です。
遠慮は美徳である一方、過剰な遠慮は女性の選択肢を奪い、未来の機会を小さくしてしまいます。
交渉力は“感情知性”とセットで磨かれる
交渉とは、相手を言い負かす行為ではありません。
医療現場でも、企業でも、イベント企画でも、私が一貫して大切にしてきたのは、**「相手の感情・背景を理解しながら、事実と希望を伝えること」**でした。
交渉には、
相手の立場を理解する力(共感)
自分の希望を整理する力(自己認識)
事実に基づく説明(論理)
が必要で、これは**感情知性(EQ)**そのものなのです。
医療説明も“交渉”である
助産師として、多くの女性と医療者の間に立ってきました。
そこで痛感したのは、患者さんが「質問してはいけない」と感じてしまう状況です。
しかし本来、医療は患者が主体であり、
・治療方針
・リスク
・選択肢
について納得できるまで確認するのは当然の権利です。
医療説明は一方通行ではなく、
女性が意思決定者として関わる“交渉”の場なのです。
パートナーシップは“協働交渉”で育つ
家事・育児・収入・働き方――
これらをどう分担し、どのように家族像を描いていくのかは、話し合いと再調整の連続です。
「言わなくても察してほしい」
「我慢すれば丸く収まる」
このどちらも、長期的にはパートナーシップの負荷になります。
家庭は小さな共同経営。
だからこそ、率直で誠実な交渉が、関係性の健全性を守る鍵になるのです。
企業と女性社員の交渉は“未来投資”になる
昇給、役割、勤務形態、育休後のキャリア設計。
企業と働く女性の関係には、交渉ポイントが数多く存在します。
女性が交渉力を持つことは、
企業にとっての“負担”ではなく、
組織が人材を生かすための情報を得られる機会です。
正しく交渉できる女性が増えれば、企業はより柔軟で強い組織へと変わっていきます。
福祉制度は“知って交渉する人”に開かれている
障がい福祉、就労支援、医療費制度、住まいの補助。
行政の支援制度は多岐にわたっていますが、
「自分で調べ、申請し、条件を交渉した人」だけが受け取れる側面があります。
私は就労支援事業を運営する中で、
“制度は、交渉の力を持つ人に最もやさしい”
という現実に何度も向き合いました。
交渉力=“自分の価値を言語化する力”
交渉の本質は、自己肯定感よりも“自己理解”にあります。
・自分はどんな働き方を望むのか
・何にストレスを感じ、何を優先したいのか
・どんな未来を描いているのか
これらを言語化できる人は、環境に左右されず、
選択肢を自分で広げることができます。
交渉力とは、自分の価値観を未来に投資する行為なのです。
“交渉できる女性”が社会を変える
交渉力を持つ女性が増えると、社会の構造そのものが変わります。
・企業の意思決定が透明になる
・医療コミュニケーションが双方向になる
・パートナーシップが対等に近づく
・福祉制度が使われやすくなる
これはすべて、女性個人の力が強くなるだけでなく、
社会全体の公平性を高める作用を持っています。
交渉力とは、
“自分の人生のハンドルを自分で握るためのスキル”であり、
女性の未来戦略の中心に位置する力なのです。
