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こんにちは、仁蓉まよです。
助産師として医療現場に立ちながら、女性のキャリア支援や社会起業にも携わってきた私は、近年「デジタルとの付き合い方」が、心の健康や意思決定の質に大きく影響していると感じています。
AIやSNSが生活の一部となり、便利さが進む一方で、情報に追われる感覚や、つながりの中での“感情の疲れ”を抱える女性が増えているのです。
デジタルテクノロジーが日常のすべてに浸透した今、私たちは「効率」と引き換えに、“心の余白”を失いかけています。
AIツール、リモートワーク、SNS——情報の洪水の中で、脳も感情も常に「接続」された状態にある。
本稿では、医療・福祉・キャリア支援に携わる私の視点から、科学的データと社会動向をもとに“感情ウェルビーイング”を取り戻すための戦略をお伝えします。
デジタル疲労とは「情報の過剰接続」状態である
WHO(世界保健機関)は、慢性的な情報過多がストレスや睡眠障害を引き起こす「デジタルストレス」を新たな健康課題として指摘しています。
スマートフォンの平均使用時間は日本では1日4.5時間(2024年総務省データ)。
脳科学的には、通知・SNS・マルチタスクの繰り返しが“扁桃体(感情中枢)”を刺激し、常に警戒状態を作ることがわかっています。
つまり、デジタル疲労とは「情報の接続が途切れない」ことで、感情の休息を奪う状態なのです。
SNS時代の「比較疲れ」が感情をすり減らす
SNS上の他者との比較は、自己肯定感を低下させる最大の要因のひとつです。
スタンフォード大学の研究によると、Instagram利用者の約60%が「他人の生活を見て落ち込む経験」をしています。
特に女性は“共感”を軸にSNSを使うため、他人の感情や成功体験を自分の課題として受け止めやすい傾向があります。
その結果、「私はまだ足りない」「置いていかれる」という焦燥感が蓄積し、感情疲労へとつながります。
リモートワークがもたらす“感情の分断”
テクノロジーによって働き方の自由は広がりましたが、同時に「孤立感」も増しています。
職場での雑談や表情の読み取りといった“非言語的な交流”が減少することで、脳の「オキシトシン(安心感ホルモン)」分泌が低下することが明らかになっています。
女性のキャリア支援現場でも、「在宅勤務中にモチベーションが維持できない」「誰かに話を聞いてほしい」といった相談が増加。
テクノロジーの効率性だけでなく、感情的つながりの再設計が求められています。
AIとの共存が生む「感情認識疲労」
AIアシスタントやチャットツールが普及する一方で、人間側が「機械的に対応しなければ」と無意識に感情を抑え込む現象が見られます。
医療現場でもAI問診ツールの導入後、一部の看護師が「人との会話が減って孤独を感じる」と訴えるケースがあります。
AIは効率化のためのツールである一方、“共感”や“表情”を介した感情交流を減らしてしまう可能性があるのです。
したがって、AIと人間の関係性を“感情の補完関係”として再設計することが重要です。
「感情ウェルビーイング」はスキルである
心の健康は生まれつきではなく、トレーニングで育てられます。
ハーバード大学の研究によると、マインドフルネス瞑想を8週間続けた人の扁桃体活動が減少し、ストレス耐性が高まったと報告されています。
また、感情を「識別・言語化」する力を高める“エモーショナル・リテラシー教育”は、職場の生産性と幸福度を同時に上げることが確認されています。
つまり、“感情の健康”は自己管理の一部であり、学びによって磨くことができるのです。
「デジタル・サバティカル」のすすめ
企業や行政でも、デジタル疲労対策として「デジタル・サバティカル(意図的なデジタル断ち)」が注目されています。
例えば、グーグル本社では「No Meeting Friday」制度を導入し、週1回はオンライン会議を禁止。
また、スウェーデンでは自治体が「デジタル休暇」を支援する取り組みを始めています。
私自身も週末はスマホをオフにして“自然と感情の再接続”を意識しており、これは心の再起動に非常に効果的なのです。
共感とつながりを再構築する社会デザイン
デジタル疲労への対抗策は「孤立を減らす社会構造」を取り戻すことにあります。
地域コミュニティやオンラインサロンでの“共感の共有”は、心理的回復力(レジリエンス)を高める効果があると報告されています。
特に女性支援の現場では、「話を聴いてもらえる」「共感し合える」関係性が、キャリア継続やメンタルヘルス維持の大きな支えになります。
テクノロジーが人をつなぐだけでなく、“心”をつなぐための設計思想が必要なのです。
感情を取り戻すことが、AI時代の“人間力”になる
デジタル社会を生きる私たちに必要なのは、テクノロジーを排除することではなく、「どう共存するか」を学ぶことです。
AIやデジタルツールを”感情の代替”ではなく、”感情を活かす補助線として使いこなす”――それが本当のウェルビーイング戦略です。
感情を正しく感じ、休ませ、表現できる人こそが、これからの時代に最も強く、しなやかに生きられる。
デジタルの時代だからこそ、「感情の知性」を育てることが、私たちの未来の最大の投資なのです。
