起業家インタビュー

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花
先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

古森:
本日インタビューを担当させていただきます、古森です。よろしくお願いいたします。
まずは簡単に、自己紹介をお願いいたします。

近藤:
近藤姫花と申します。現在26歳です。
私は先天性の心疾患とともに生きており、その経験を発信する活動を主に行っています。
その他には、オンライン家庭教師の仕事や、私のように心疾患を持って生まれ、大人になった方たちの発信の場をつくるコミュニティも運営しています。

現在は通信制大学にも在籍しています。仕事や体調、他にやりたいこととのバランスを大切にしながら、自分のペースで卒業したいと思っています。

また最近は、「SensVeiL」というプロジェクトも始めました。動物占いや好きな色をヒントに、その方の内面をイラストに起こすというものです。

人生そのものが価値になる。私にしかできない発信のはじまり

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

古森:
多岐にわたって活動されているのですね。その行動力やエネルギーは、どこから湧いてくるのでしょうか。
活動を始めようと思ったきっかけも、ぜひ教えてください。

近藤:
活動を始めたきっかけは、高校2年生の時です。
甲状腺機能障害になり、その症状として、うつのような状態になってしまいました。本来なら学校に通っている時期なのに、学校に行けなくなってしまって。ずっと家にいて何もできず、「生きている意味がないな」と感じることもありました。

そんな中で、「何か自分にできることはないかな」と考えて、出てきたのが発信だったんです。

私は、先天性の心疾患とともに生きてきました。その経験を発信することは、「私にしかできないことなのではないか」と思ったんです。それが最初のスタートでした。発信を続ける中で、「人生そのものが価値になるんだな」と気づいて、今も続けています。

古森:
素晴らしいですね。
最近は、体調とのバランスはいかがですか? 実際に働く中で、感じている課題や不安はありますか。

近藤:
働き方については、結構考えています。
いわゆる正社員として、週5日、決まった時間に出勤して働く生活を長期的に続けるのは難しいと思っています。そうした働き方だと「働くこと」自体が目的になってしまいそうだと感じたんです。なので、就職活動はしませんでした。

コロナ禍で大学を中退した時期と重なったこともあり、何もないところから自分で仕事を始める「起業」というスタートを選びました。

とはいえ、最初から自営だけでやっていたわけではなく、パートをいくつか掛け持ちしていた時期もあります。パートの収入に支えてもらいながら、少しずつ自分の仕事を形にしていった感じです。

ただ、長く働き続けることを考えると、オンラインでできる今の働き方のほうが自分には合っています。体調を優先しやすいですし、移動の負担や余計なストレスを減らせるのも大きいですね。

もちろん、個人事業主として活動することには、経済的な安定という面で難しさもあります。それでも、自分の得意なことを活かしながら、体調を優先できる今の環境を選んでよかったと思っています。

古森:
会社員を経て起業する方も多い中で、近藤さんは最初から今の働き方を選ばれました。実際に始めてみて、いかがですか?

近藤:
中学生の頃までは、安定した場所を求めて公務員になろうと考えていました。心疾患があるからこそ、なるべく室内で無理なく働ける場所がいいと、「体調」をベースに考えていたんです。

ですが、高校2年生の時に発信活動を始めてから、考え方が大きく変わりました。もちろん体調管理は大切ですが、それ以上に「自分のやりたいこと」をベースに進みたいと思うようになったんです。

高校生の時の進路相談でも、「将来やりたい活動のために何をしたらいいか」を先生に相談していました。その結果、福祉学部のある大学へ進みましたが、あまり自分に合わなくて辞めてしまいました。そこから方向修正を繰り返して、今にたどり着いています。

自分で自分のために動く今のスタイルは、私の性格にも合っているのかなと思っています。

古森:
ご自身の考えが、すごくしっかりされていますね。
周りに流されるのではなく、自分が楽しく続けられる形を大切にされている感じがして、すごいなと思います。

近藤:
そうですね。
同世代にはしっかり貯金を始めている友人もいますが、私は心疾患があることもあり、未来のためになんとなく貯金をすることはあまりしないんです。

もちろん、急に明日どうにかなるということはありません。それでも、未来のために何かをセーブするより、今を大事にしたいという感覚があります。だから、あまり「世間ではこうだから」という感覚はないかもしれないですね。

古森:
病気があるからと悲観的になるのではなくて、今をどう生きるかを大切にされているところが、すごく魅力的だなと感じます。

近藤:
ありがとうございます。

心疾患とともに生きる経験を、必要としている人に届けたい

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

古森:
次に、事業内容についてお伺いします。どんなサービスを、どんな方に届けていきたいと思っていますか。

近藤:
オンライン家庭教師については、生活を支える仕事として続けている部分が大きいです。もちろん、生徒さんには今後もより良い授業を提供していきたいと思っています。

そのうえで、個人的に一番力を入れているのは、先天性心疾患のコミュニティ「ココの輪」です。一昨年くらいからメンバーズ制度を始めました。

私のように、心疾患とともに生きながら大人になった方たちがいます。男性・女性、疾患の種類、働き方、体調など、本当に人それぞれです。そうした多様なロールモデルを発信できれば、同じような境遇にいる方の参考になるのではないかと思い、始めました。

現在、メンバーは運営チームを除いて10人います。その10人を、これから100人にすることが目標です。

今はまだ収入があるコミュニティではなく、私自身の収入で運営している形です。だからこそ今後は、きちんと事業化・法人化して、口コミだけではなく、より公式な立ち位置を持てる場所にしていきたいと思っています。

古森:
同じように病気と向き合っている方たちがコミュニティにいるだけでも励みになりますよね。
心疾患とともに生きている方だけでなく、ご家族にとっても、近藤さんのコミュニティを知ることで安心につながる場になっていきそうだなと感じます。

近藤:
そうですね。
「ココの輪」の特徴は、当事者本人の記事を発信していることです​​。
「みんなこうだよ」「だいたいの人はこうだよ」ではなく、「私はこうだった」「別の誰かはこうだった」というように、一人ひとりの経験を届けています。

発信する側も、「自分の経験を伝えたい」という気持ちを持っている人が多いんです。実際、メンバーを募集すると枠がすぐに埋まり、選考になったこともありました。

それぞれのインスタアカウントで発信しているだけでは、どれだけ良いことを伝えていても、必要な人に届きにくいことがあります。

だからこそ、発信したい人と受け取りたい人をつなげたい。「ココの輪」という場所に情報が集まることで、見る側も「ここに来れば知りたい情報がある」と分かりやすくなると思っています。当事者の貴重な声を、必要としている人にダイレクトに届けられる形にしたいです。

今はまだ少人数だからこそ何とかなっている部分もありますが、これから仕組みを整えながら、100人規模の団体にしていきたいというのが今後の構想です。

「面白そう」という直感でFEAへ。知らない世界と出会える場所

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

古森:
FEAについてもお話を伺えたらと思います。FEAに入られたきっかけはありますか?

近藤:
FEAに入る前から、イベントに参加させていただく機会があり、その中で「いいな」と思うことはありました。ただ、一番大きかったのは、土岐あいさんのことが好きだったことですね。あいさんが関わっている場所なら面白そうだなと思ったんです。

なので、つながりが欲しいとか、何かをしてほしいというよりは、「面白そうだから入ってみようかな」という感覚で入りました。

古森:
実際に入ってみて、何か変化はありましたか。

近藤:
入る前から情報は拝見していたので、受け取る情報に大きな変化があったわけではありません。ただ、FEAの方とやり取りさせていただく機会が増えました。

そういう意味では、私が普段いる先天性心疾患の分野とはまた違う方たちと触れ合える機会が、すごく増えたと感じています。

古森:
FEAのように、いろいろな起業家の方や、さまざまな業種の方と出会える場で、自分の知らない世界とつながれるというのは大きいですよね。

近藤:
そうですね。
あとは、FEAの皆さんは本当に良い方ばかりだなと思っています。

私はこういう場にあまり入ったことがなかったのですが、いろいろな人が集まる場所って、派閥があったり、上下関係のようなものがあったりするイメージがありました。

ですが、FEAはそういう感じがなく、自然に関わっていただけるので、すごくありがたいです。安心して関われる方がたくさん集まっている場所だなと思います。

古森:
そう感じていただけていると思うと、私たちも励みになります。

「普通」じゃなくていい。自分に合った形で働ける社会をつくりたい

先天性心疾患とともに生きる経験を、誰かの希望に変えていく|近藤姫花

古森:
改めて、今後チャレンジしていきたいことや、目指している夢についてお聞かせいただけますか?

近藤:
私の一番の夢は、先天性心疾患とともに生きる人たちが、人生の中で「先天性心疾患があること」をマイナスに感じる場面を減らしていくことです。

もっと言うと、お母さんたちが「お子さんが心疾患です」「お腹の子が心疾患です」とわかったときに、「そうなんだ」と受け止められるくらい、どうにかなると思える社会をつくっていきたいんです。

そのための一つが、「ココの輪」のコミュニティづくりです。

たくさんの人たちが、自分の中にある「ここは嫌だな」と思っている部分を、「だからいいよね」「普通じゃないからいいよね」と思えるような社会をつくりたいんです。
そのために、常に新しい行動をしていけたらと思っています。

古森:
最後に「これは伝えておきたいな」ということはありますか。

近藤:
私が関わっている心疾患のある方の中にも、起業したいと考えている方はたくさんいます。

今、女性起業家はどんどん増えていて、盛り上がっているところだと思います。
だからこそ、その流れの中に、心疾患があって少し働きづらさを感じている人たちも入っていけたらいいなと思っています。

先ほども話したように、週5日、決まった時間に会社へ行くような働き方は難しくても、自分の持っているものを活かしたいという人はいると思うんです。
そういう人たちが、自分に合った形で起業できるようになったらいいなと思っています。

古森:
とても貴重なお話を伺うことができました。
ありがとうございました。

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