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女性の人生を考えるとき、「働いている時間」や「家事をしている時間」には目が向きます。
しかし、実際にはその間に、もっと見えにくい時間があります。
誰かから連絡が来るのを待つ。
子どもの予定変更に備えて仕事を調整する。
家族の体調不良に備えて予定を空けておく。
病院や行政の順番を待つ。
パートナーの意思決定を待って、自分の予定を決める。
私は、こうした時間を「待機時間」と捉えています。
待機しているだけなら、何もしていないように見えるかもしれません。
しかし、その時間には、確実に「いつでも対応できる状態を維持する」というコストがあります。
女性のキャリアや経済自立を考えるなら、働いた時間だけではなく、誰かのために拘束されている時間、予定を確定できない時間まで含めて考える必要があるのではないでしょうか。
「待つ」は労働になり得る
待機している時間は、給与明細にはほとんど表示されません。
けれども、「何か起きたら対応する」という状態を維持することは、自由な時間とは異なります。
たとえば、家族の介護や子育てでは、実際に介助していない時間にも、いつ連絡が来ても対応できるようにしておく必要があります。
これは、目に見える作業ではありません。
だからこそ、社会から見えにくいのです。
私は、女性のキャリアを考える際には「何時間働いたか」だけではなく、何時間、自分の時間を自由に使えなかったかを見る必要があると考えています。
予定を決められないコスト
時間には、「使った時間」だけではなく「使えなかった時間」があります。
例えば、家族の予定が確定しないために旅行や仕事の予定を入れられない。
子どもの体調次第で、急な休みに備えなければならない。
家族の都合を優先して、自分の学びや仕事の予定を後回しにする。
このような状態が長く続けば、本人の能力とは関係なく、キャリアの選択肢が狭くなっていきます。
つまり、女性のキャリア格差を考えるとき、所得や職位だけではなく、**「自分で時間を決められる権利」**も重要な指標になるのです。
「いつでも対応できる人」の負担
組織の中でも、「この人なら何とかしてくれる」と期待される人がいます。
急な依頼に対応する。
誰かの代わりに入る。
トラブルが起きたときに調整する。
こうした役割は、組織にとって非常に重要です。
一方で、それが特定の人に偏ると、その人の時間は少しずつ削られていきます。
特に「感じがよく、断らず、調整力が高い人」は、この見えない仕事を引き受けやすい傾向があります。
私は、組織が評価すべきなのは「いつでも対応してくれる人」だけではなく、その人がどれだけ見えない調整コストを負担しているのかだと思います。
婚活にも「待機時間」がある
これは、婚活にも当てはまります。
相手からの連絡を待つ。
相手の予定に合わせる。
関係が進展するか分からないまま時間を使う。
恋愛では、この時間が「仕方のないもの」と捉えられがちです。
しかし、人生設計という視点から見ると、待機時間は決して小さな問題ではありません。
結婚、出産、転居、転職など、ライフイベントには時間的な連動があります。
だからこそ私は、婚活を「相手に選ばれるための活動」だけではなく、自分の人生の時間をどのように配分するのかを考える活動として捉えることが重要だと考えています。
医療でも「待つ」は負担になる
助産師として医療現場にいた私自身、「待つこと」が患者さんに与える負担を考える機会が多くありました。
診察を待つ。
検査を待つ。
結果を待つ。
治療方針を待つ。
特に妊娠、不妊治療、婦人科領域などでは、結果を待つ時間そのものが大きな心理的負担になることがあります。
さらに、通院のために仕事を休む、移動する、予約を調整するといった周辺コストも発生します。
医療の質を考えるとき、治療そのものだけではなく、患者さんが治療を受けるまでに消費する時間や生活上のコストにも目を向ける必要があります。
行政サービスも時間を設計する
女性支援を行政施策として考える場合にも、「何を支援するか」だけでは十分ではありません。
申請書を書く。
予約を取る。
窓口へ行く。
必要書類を集める。
結果を待つ。
支援制度が存在していても、利用するまでに多くの時間と手間が必要なら、本当に支援を必要としている人ほど利用できない場合があります。
だからこそ、行政に求められるのは制度の数だけではなく、制度を利用するまでの時間的負担を減らす設計です。
「支援がある」ことと、「支援を使える」ことは同じではありません。
AI時代に減らせる待機時間
これからは、AIやデジタル技術によって減らせる待機時間も増えていくでしょう。
情報を探す。
日程を調整する。
書類を整理する。
問い合わせ内容をまとめる。
こうした作業をAIに任せることで、人間が「待つ」「探す」「調整する」ために使っていた時間を取り戻せる可能性があります。
ただし、私は「時間が空いたから、さらに仕事をする」という発想だけではもったいないと思います。
AIによって生まれた時間を、休息、学び、人との関係、創造活動、自分自身の意思決定に使う。
時間を取り戻すことは、人生の主導権を取り戻すことでもあるのです。
女性の時間を「資産」として考える
女性の経済自立を考えるとき、私は「お金」だけを資産として見る必要はないと思っています。
信用も資産です。
知識も資産です。
人脈も資産です。
そして、時間も資産です。
特に重要なのは、自分で使い道を決められる時間です。
誰かを支えるための時間も大切です。
けれども、人生のすべてを誰かのために待機する時間にしてしまえば、自分自身の未来を設計する余白がなくなります。
だからこそ、女性のキャリアや婚活、子育て、介護、医療、起業を考えるとき、私は「何をするか」だけではなく、**「誰のために、どれだけの時間を待機させているのか」**という視点を持ちたいのです。
時間は、使った瞬間に消えてしまいます。
だからこそ、自分の時間を誰に渡し、何のために使うのかを決めることは、人生における非常に重要な意思決定なのです。
