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2026年4月1日、改正女性活躍推進法の施行により、企業に求められる女性活躍に関する情報公表が拡大されました。
大きな変更の一つが、「男女間賃金差異」の公表義務の対象拡大です。
これまで、常時雇用する労働者が301人以上の事業主には男女間賃金差異の公表が義務付けられていました。2026年4月1日からは、その対象が101人以上の事業主へと広がりました。
同時に、常時雇用する労働者が101人以上の事業主には、「女性管理職比率」の公表も新たに義務付けられています。
私は、女性のキャリアや経済的な自立を考えるうえで、賃金を本人の努力や交渉力だけの問題として捉えないことが重要だと考えています。
そこで今回は、制度改正によって何が変わったのか、私たちは公表された数字をどう読めばよいのかを、厚生労働省が公表している情報をもとに整理します。
公表対象は101人以上へ
4月1日の改正で、男女間賃金差異の公表義務は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主から101人以上の事業主へ拡大されました。
101~300人の事業主は、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」に加え、女性活躍に関する所定の情報公表項目から1項目以上を選択し、合計3項目以上を公表します。
なお、301人以上の事業主は上記に加え、定められた区分からそれぞれ1項目以上を選択し、合計4項目以上を公表します。
一方、100人以下の事業主について、女性活躍に関する情報公表は「努力義務」です。
今回の改正でまず知っておきたいのは、男女間賃金差異を公表する企業の範囲が、101人以上へ広がったことです。
賃金差異はどう計算するのか
ここで注意したいのは、「男女間賃金差異」が個々の男性社員と女性社員の給与を公開する制度ではないことです。
厚生労働省が示す算出方法では、男女間賃金差異は、男性労働者の平均年間賃金に対する女性労働者の平均年間賃金の割合として示されます。
計算式は、
「女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100」です。
たとえばこの計算結果が80.0%であれば、対象となる区分において、女性の平均年間賃金が男性の平均年間賃金の80.0%であることを意味します。
算出にあたっては、賃金台帳や源泉徴収簿などをもとに、原則として直近の事業年度について男女別の賃金総額を算出し、それぞれの労働者数で割って平均年間賃金を求めます。
そのため、「賃金の透明化」といっても、個人の給与額を公開する仕組みとは区別して理解する必要があります。
3つの区分で公表する
男女間賃金差異は、企業全体の数字を一つだけ示せばよいわけではありません。
厚生労働省は、
「全労働者」
「正規雇用労働者」
「非正規雇用労働者」
の3区分について、それぞれ男女間賃金差異を算出し、公表することを求めています。
この区分は重要です。
たとえば企業全体の数字だけでは、正規雇用と非正規雇用の構成がどのようになっているのかまでは分かりません。
一方、3区分を確認すれば、「正規雇用労働者ではどの程度の差異があるのか」「非正規雇用労働者ではどうなのか」と、雇用形態を分けて確認できます。
なお、公表する数値については小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示することとされています。
数字だけでは原因は分からない
公表された男女間賃金差異を見る際には、大切な注意点があります。
数字そのものから、差異が生じている原因まで自動的に判断できるわけではありません。
厚生労働省も「女性の活躍推進企業データベース」の活用方法として、数値の大小だけではなく、その背景や過去からの変化、企業の取組にも目を向けることを案内しています。
企業の規模や業種や部署、採用の時期などによっても数値には違いが生じるためです。
したがって、男女間賃金差異の数字だけを見てその企業における女性活躍の状況全体を断定することは適切ではありません。
数字を入口として、「なぜこの数値になっているのか」「企業はどのような課題を把握し、どのような取組を行っているのか」まで確認することが重要になります。
賃金と管理職比率を併せて見る
男女間賃金差異とともに確認したいのが、「女性管理職比率」です。
4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の事業主には、女性管理職比率の公表も義務付けられました。
厚生労働省が女性活躍推進法において示す「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計です。
ここで重要なのは、男女間賃金差異と女性管理職比率は、それぞれ異なる状況を示す指標であるということです。
「男女間賃金差異」は男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合を示します。
一方、「女性管理職比率」は管理職に占める女性の割合を示します。
したがって、一つの数字だけで企業の女性活躍の状況を判断するのではなく、賃金差異、管理職比率、さらに企業が公表しているその他の情報を併せて確認することが大切です。
求職者も企業データを見られる
公表された情報は、行政や企業だけのためにあるものではありません。
厚生労働省は「女性の活躍推進企業データベース」を公開しており、求職者も企業の女性活躍に関する情報を確認できます。
同データベースでは、男女間賃金差異をはじめ、企業が公表している女性活躍に関する情報や、えるぼし認定などの取得状況を確認できます。
企業側にとっても、自社の状況や取組を発信したり、他社の事例を参考にしたりする場として利用できます。
また、4月1日施行の改正法に基づく指針では、情報公表にあたって「女性の活躍推進企業データベース」を利用することが最も適切である旨が示されています。
女性が就職や転職を考える際にも、企業名や求人票だけではなく「企業自身が公表するデータ」を確認するという選択肢があるのです。
公表はゴールではない
情報公表制度について、企業が数字を公開すればそれだけで男女間賃金差異が解消される、と理解することはできません。
厚生労働省は、男女間賃金差異について、企業における女性活躍の状況を示す指標の一つとして位置付けています。
そして女性活躍推進法では、一定規模以上の事業主に対し、自社の女性活躍に関する状況把握や課題分析を行ったうえで、一般事業主行動計画を策定する仕組みが設けられています。
つまり重要なのは、公表された数字そのものと、その背景にある企業の業種、状況や取組を分けて考えることです。
求職者側にとっても、「数字が高いから良い会社」「低いから悪い会社」と単純化するのではなく、複数の公表項目や企業による説明を併せて確認することが、制度を正しく活用することにつながります。
賃金を「見える情報」にする意味
4月1日の制度改正によって、男女間賃金差異の公表義務は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主から101人以上の事業主へと拡大、さらに女性管理職比率も、101人以上の事業主に公表が義務付けられました。
ここまでは制度として確認できる事です。
そのうえで、女性の人生設計や経済的自立を支援してきた仁蓉まよとして大切だと考えるのは、「女性自身が確認できる情報が増えた」という点です。
給与や昇進について考えるとき、女性個人の努力だけに答えを求めるのではなく、自分が働いている企業、あるいはこれから働こうとしている企業が、どのような雇用環境にあるのかを公開情報から確認することができます。
もちろん「男女間賃金差異」という一つの数字だけで企業の良し悪しを決めることはできません。
だからこそ「賃金差異、女性管理職比率、雇用形態、企業の取組やその変化」を複数の情報から見ることが大切です。
女性の経済的自立を考えるとき、「もっと頑張る」という個人の努力だけではなく「どのような環境で働くのかを、情報をもとに選ぶ」という視点も必要です。
賃金の透明化とは、数字を公開することだけではありません。
公開された数字を、企業が自社の課題を把握するために使い「働く人や求職者が自分のキャリアを考える材料として使える状態」にしていくこと。
2026年の制度改正を、女性のキャリアと経済的自立という視点から考えるなら、私はそこに大きな意味があると考えています。
