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銀行口座をつくる。スマートフォンを契約する。行政サービスを利用する。住まいを借りる。オンラインで金融サービスを使う。
私たちの生活には、想像以上に多くの「本人確認」が存在しています。
普段は単なる手続きとして通り過ぎてしまいますが、仁蓉まよは、この本人確認という仕組みを「社会に参加するための入口」として考える必要があると思っています。
自分が自分であることを証明できる。必要なサービスに自分の意思でアクセスできる。その当たり前を支える仕組みは、女性の経済的・社会的自立とも深く関係しています。
今回は、「本人確認」という小さな手続きから、女性の自由を支える社会インフラについて考えます。
本人確認は社会への入口
本人確認というと、運転免許証などの身分証明書を提示する場面を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、その先にあるものを見ると意味が変わります。
本人確認が完了することで、契約できる、口座を利用できる、サービスを受けられる。つまり本人確認とは、単に「あなたは誰ですか」と確かめる作業ではなく、社会のさまざまな機能へアクセスするための入口なのです。
だからこそ、「本人確認ができること」を社会参加の基盤として捉える視点が必要です。
名前が変わるという負担
女性の人生では、結婚や離婚などをきっかけに姓が変わる場合があります。
すると、一つの変更が複数の手続きへ波及します。
金融機関、保険、勤務先、各種契約、オンラインサービスなど、それぞれで登録情報を確認し、必要に応じて変更しなければなりません。
一つひとつは小さな作業でも、積み重なれば時間と注意力を消費します。
制度を考えるときには、手続きそのものだけでなく、「変更する人が負担する時間」まで見る必要があると私は考えています。
デジタル化で終わりではない
本人確認も急速にデジタル化しています。
スマートフォンを使った本人確認などによって、窓口へ行かなくても手続きを完結できるサービスは増えています。
これは大きな利便性です。
一方で、デジタル機器の操作に慣れていない人、必要な環境を持っていない人、複雑な手続きが苦手な人まで、同じように利用できるとは限りません。
「オンラインにしたから便利になった」で終わらず、「誰が途中で取り残されるのか」まで設計することが重要なのです。
証明できない人をつくらない
医療や福祉の現場に携わってきた私は、制度というものは「利用できる人」だけを見ていてはいけないと感じています。
必要な書類をすぐ準備できる人ばかりではありません。
家族関係、住環境、経済状況、障がい、年齢など、さまざまな事情によって手続きの難易度は変わります。
本人確認の厳格さは、安全を守るために必要です。しかし同時に、証明することが難しい状況にある人を社会から排除しない仕組みも必要です。
安全性と包摂性は、どちらか一方を選ぶものではありません。
本人確認と経済自立
女性の経済自立を考えるうえでも、本人確認は意外に重要です。
働く、口座を持つ、契約する、資産を管理する。こうした行動には、「本人として社会と取引できること」が前提になっています。
経済自立というと、私たちはどうしても「収入を増やす」「投資を学ぶ」といった部分に注目します。
しかし、そのさらに手前には、自分自身の名義と意思で社会の仕組みを利用できる環境があります。
自立とは、お金を持つことだけではありません。自分でアクセスし、自分で確認し、自分で決められることでもあるのです。
安全と利便性のバランス
本人確認を簡単にしすぎれば、不正利用やなりすましなどのリスクが高まります。
反対に、安全性だけを追求して手続きを複雑にすれば、本当にサービスを必要としている人が利用できなくなる可能性があります。
ここに制度設計の難しさがあります。
企業や行政に求められるのは、「厳しくするか、簡単にするか」という二択ではありません。
安全を確保しながら、利用者の負担をどこまで減らせるのか。その両立こそが、これからのサービス設計に必要な視点だと思います。
手続きの時間もコスト
私はこれまで、女性の意思決定や時間の価値について繰り返し考えてきました。
本人確認にも同じ視点が必要です。
書類を探す。写真を撮る。入力する。エラーになってやり直す。問い合わせる。窓口へ行く。
こうした時間は、サービス提供者から見ると見えにくいものです。しかし利用者にとっては、確実に発生しているコストです。
良いサービスとは、料金が安いサービスだけではありません。
利用者の時間と注意力を必要以上に奪わないことも、これからの重要な価値になるのではないでしょうか。
「私は私」を支える社会へ
本人確認は、とても事務的な言葉です。
けれど、その本質を考えていくと、「私は私である」ということを社会がどのように認めるのか、という大きなテーマにつながります。
結婚しても、離婚しても、転職しても、引っ越しても、年齢を重ねても、一人の人間として社会との関係を継続できる。
私は、そんな仕組みこそ女性の自立を支えるインフラだと考えています。
女性の自由を広げるために必要なのは、華やかな支援策だけではありません。
毎日の暮らしの中にある、小さな手続きを使いやすくすること。
「自分を証明する」という当たり前の行為を、誰にとっても過度な負担にしないこと。
その積み重ねが、自分の人生を自分の名前と意思で選べる社会につながっていくのです。
