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女性の人生には、妊娠・出産、育児、介護、病気、離職、転職、起業など、働き方や収入が大きく変わる局面があります。
私は助産師として医療に携わり、福祉事業を経営しながら女性のキャリアや人生設計を支援する中で、「制度がないこと」だけが問題なのではないと感じてきました。
制度が存在していても、自分が対象だと気づけない。どこに相談すればよいかわからない。申請が複雑で途中で諦めてしまう。
つまり必要なのは、制度についての「知識」だけではなく、必要なときに制度へアクセスし、自分の人生に実装する力なのです。
これからの女性支援では、「制度をつくる」だけでなく「制度を使えるところまで支える」という発想が必要だと私は考えています。
制度は存在するだけでは届かない
行政、医療、福祉、雇用の領域には、生活を支えるさまざまな制度があります。
しかし、制度が存在していることと、それが必要な人に届いていることは別問題です。
支援する側にとっては当たり前の制度でも、初めて利用する人にとっては、専門用語や申請条件を理解するだけでも大きな負担になります。
制度設計では「何を提供するか」だけでなく、「どうすれば利用できるのか」まで考える必要があります。
困ってから調べるのでは遅い
制度について調べ始めるのは、多くの場合、問題が起きてからです。
仕事を続けられなくなった。家族の介護が始まった。妊娠した。収入が減った。離婚を考えている。
しかし、大きなライフイベントの最中は、情報を比較し、条件を読み、必要書類をそろえるための時間も精神的な余裕も少なくなります。
だからこそ私は、金融教育や健康教育と同じように、「制度教育」も人生設計の一部にする必要があると考えています。
申請できる力も生活スキル
制度の多くは、自分から申請しなければ利用できません。
ここには意外に大きな差が生まれます。
情報を検索できる。自分が対象か確認できる。必要書類をそろえられる。わからないことを問い合わせられる。
こうした行動は一見簡単に見えますが、体調不良や経済的不安、育児や介護を抱えている状況では決して容易ではありません。
「申請できること」そのものが、現代社会を生きる重要な生活スキルになっているのです。
「相談する力」も格差になる
制度利用では、誰に相談するかによって得られる情報が変わることがあります。
行政、医療機関、福祉事業者、勤務先、専門職など、それぞれが持っている情報は異なります。
だから重要なのは、一人の専門家にすべてを任せることではありません。
「この問題はどこに相談すればよいのか」を判断し、必要に応じて複数の窓口につながる力が必要です。
私はこれを、人生における「相談先のポートフォリオ」だと捉えています。
デジタル化だけでは解決しない
行政手続きのオンライン化が進めば、制度は便利になります。
一方で、「オンラインにすれば誰でも使える」という考え方には注意が必要です。
検索する力、文章を読み解く力、入力する力、必要な情報を判断する力がなければ、デジタル化された制度でも利用のハードルは残ります。
便利な仕組みをつくることと、誰もが使える仕組みをつくることは同じではありません。
テクノロジーと人的支援をどう組み合わせるかが重要なのです。
企業にも「制度翻訳」が必要
女性のキャリア支援を考える企業にも、制度をわかりやすく伝える役割があります。
育児や介護、休職、復職などに関する制度を社内ポータルに掲載するだけでは十分とは限りません。
「自分の場合は何を使えるのか」「利用するとキャリアはどうなるのか」まで具体的に理解できて初めて、制度は意思決定の材料になります。
制度を社員の日常の言葉へ置き換える「制度翻訳」は、これからの人事戦略にも必要な視点です。
支援者は伴走者である
医療や福祉の現場では、支援者が制度を説明する機会が数多くあります。
しかし私は、支援者の役割は「正しい制度を教えること」だけではないと思っています。
その人が何を大切にしているのか。仕事を続けたいのか。休みたいのか。家族との生活をどうしたいのか。
制度は人生の目的ではなく、人生を支える手段です。
本人の意思を確認しながら選択肢を整理することが、本当の意味での伴走なのだと思います。
制度を「使える社会」へ
女性支援について議論するとき、新しい制度をつくることに注目が集まりがちです。
もちろん制度そのものの充実は重要です。しかし同時に考えなければならないのは、既にある制度が本当に使われているのかという視点です。
私は、これからの企業や行政には「制度の数」だけではなく、必要な人が制度へ到達できたか、そして人生の選択肢を増やせたかという視点が必要だと考えています。
制度を知っている人だけが得をする社会ではなく、必要になった人が自然につながれる社会へ。
女性の人生の自由を広げるために必要なのは、制度そのものと同時に、制度を「使える力」と「使える環境」を社会全体で育てていくことなのです。
