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薬は、病気を治療し、症状を和らげ、命を守るために欠かせない存在です。しかし一方で、「処方されたから」「市販薬だから安全だろう」という思い込みが、思わぬ健康被害につながることも少なくありません。
私は助産師・看護師として医療現場に携わる中で、「薬を飲んでいる」という事実だけでなく、「何を、なぜ、どのように飲んでいるのか」を理解することの重要性を数多く実感してきました。
厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、医薬品を安全に使用するためには、患者自身が服薬内容を理解し、医師・薬剤師と情報を共有することが重要であると繰り返し示しています。
薬は「任せるもの」ではなく、「理解して使うもの」です。
本稿では、女性が人生のあらゆるライフステージで安全に薬と付き合うために必要な「服薬リテラシー」について考えます。
女性はライフステージごとに薬の注意点が異なる
女性の身体は、月経、妊娠、授乳期、更年期など、ライフステージによって大きく変化します。そのため、医薬品の使用にあたっては、それぞれの時期に応じた適切な判断が必要です。
厚生労働省は、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には、自己判断で薬を中止したり変更したりせず、医師へ相談することを呼びかけています。
また、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」では、妊娠中・授乳中の医薬品に関する相談や情報提供を行っています。
実際に医療現場では、妊娠が判明した際に服用中の薬について相談するケースや、妊娠前から治療を継続している慢性疾患の患者が、医師と相談しながら薬剤を調整するケースが日常的に行われています。
市販薬でも「安全」とは限らない
ドラッグストアで購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)は、医療用医薬品より身近な存在です。しかし、「市販薬だから安心」という考え方は危険です。
例えば風邪薬や鎮痛薬、アレルギー薬には眠気を起こす成分や、他の薬との相互作用を生じる成分が含まれる場合があります。
さらに、医療機関から処方された薬と市販薬を同時に服用すると、同じ成分を重複して摂取してしまうケースもあります。
PMDAでは、副作用情報や安全性情報を継続的に公開し、添付文書を確認することや、不明な場合は薬剤師へ相談することを推奨しています。
「お薬手帳」は医療安全を守る重要なツール
厚生労働省は、お薬手帳を医療安全のための重要な情報共有ツールとして位置付けています。
病院が変わるたびに服薬情報が分断されると、同じ作用の薬が重複処方されたり、相互作用を見落としたりする危険があります。
実際に厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」では、医師・歯科医師・薬剤師が、お薬手帳を活用しながら医療機関同士で情報共有することの重要性が示されています。
また、処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントの使用状況も把握することが望ましいとされています。
ポリファーマシーは「薬の数」ではなく「適正使用」の問題
厚生労働省は、ポリファーマシーを単に服用する薬剤数が多い状態ではなく、多剤服用によって副作用や服薬過誤、服薬負担などの問題が生じている状態として捉えています。
こうした課題に対応するため、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針」を策定しており、医師・薬剤師・看護師など多職種が連携しながら服薬内容を定期的に確認し、必要に応じて処方内容を見直すことを推進しています。
また、医療現場では診療報酬制度において、多剤服用の見直しを評価する仕組みも整備されています。
サプリメントや健康食品も「飲み合わせ」の確認が必要
健康食品やサプリメントは、医薬品ではなく食品として販売されているものが多い一方で、医薬品との飲み合わせによって薬の効果や副作用に影響を及ぼす場合があります。
PMDAでは、医療機関を受診する際には、処方薬だけでなく、市販薬や健康食品、サプリメントについても医師や薬剤師へ伝えるよう呼びかけています。
実際に、血液を固まりにくくする薬を服用している方では、一部の健康食品との相互作用が知られています。
他にも患者本人がサプリメントだからと服用の申告をせず、医薬品の作用に影響を及ぼす事例が報告されており、添付文書や公的機関でも注意喚起が行われています。
健康食品であっても「食品だから安全」と自己判断するのではなく、服用中の薬がある場合には、医療者へ相談することが安全な医薬品使用につながります。
副作用は「我慢」ではなく相談することが重要
薬には期待される効果だけでなく、服用する人の体質、またその時の体調によっては副作用が生じる可能性があります。
体調に異変を感じても「少し気になる程度だから」「もう少し時間を置けば」と我慢してしまう方もいますが、副作用の可能性を無視せず、早期に把握することで薬の変更や用量調整が可能になる場合があります。
PMDAでは医薬品の副作用情報を継続的に収集・公表し、安全対策へ反映しています。
また医療従事者には副作用報告制度が整備されており、安全性向上につながっています。
女性自身が「薬を理解する力」が医療を変える
医療は医師だけがつくるものではありません。
患者自身が服薬目的を理解し、「なぜ飲むのか」「いつまで飲むのか」「飲み忘れたらどうするのか」を処方時に確認することも、安全な医療の一部です。
実際に厚生労働省は、医師・薬剤師・患者が情報を共有しながら服薬を支援することを、医薬品適正使用の基本と位置付けています。
「分からないから任せる」のではなく、「分からないことを質問する」という姿勢が、自分自身の健康を守る第一歩になります。
薬を知ることは、自分の人生を守ること
薬は医療の成果であり、多くの命を救ってきた重要な存在です。
しかし、その価値を最大限に生かすためには、患者自身が正しく理解し、医療者と協力しながら使用することが欠かせません。
女性はライフステージによって身体の状態が大きく変化し、都度、服薬にもさまざまな配慮が必要になります。
そのため、「薬を処方されたから飲む」という受け身の姿勢ではなく、「薬について理解し、自ら確認し、必要な情報を共有する」という主体的な姿勢が求められます。
服薬リテラシーは、単なる医療知識ではありません。
自分の身体を守り、将来の健康を支え、安心して人生を選択するための重要な「意思決定力」の一つなのです。
