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支援のKPI——“善意”を制度に変える設計図

支援のKPI——“善意”を制度に変える設計図
大阪府 仁蓉まよ 支援のKPI——“善意”を制度に変える設計図

支援は尊い。
しかし、尊さだけでは社会は変わらない。

私は助産師として医療現場に立ち、福祉事業を経営し、女性支援の仕組みづくりに関わってきた。その中で痛感しているのは、「どれだけ頑張ったか」ではなく「何が変わったのか」を語れなければ、支援は持続しないという現実である。

本稿では、“支援のKPI(重要業績指標)”という視点から、善意を制度に変えるための評価設計について考える。これは冷たい話ではない。むしろ、支援者と当事者の両方を守るための知性の話である。

なぜ支援は測られにくいのか

仁蓉まよ

支援現場では「気持ち」や「共感」が大切にされる。もちろん、それは必要不可欠である。

しかし、感情は共有できても、成果は共有されにくい。
たとえば「安心しました」「救われました」という言葉は尊いが、それが半年後、一年後の生活にどう接続したのかまでは追われないことが多い。

測られない支援は、評価されない支援になりやすい。
そして評価されない支援は、予算も制度も拡張されない。

KPIとは“冷酷な数字”ではない

仁蓉まよ

KPIとはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳される。

つまり、「何をもって前進とするか」という“合意”のことだ。

支援のKPIは、売上や利益ではない。
たとえば——
・再相談率の低下
・就労定着率
・医療受診継続率
・経済的自立までの期間
・再被害率の減少

これらはすべて、「人生が安定したかどうか」を示すサインである。
数字は冷酷なのではない。むしろ、感情を守るための共通言語なのである。

“頑張った支援”と“変わった支援”

仁蓉まよ

支援者は努力家が多い。
だが、努力の量と成果は必ずしも比例しない。

例えば、月に何件面談を行ったかは「活動量」であって「成果」ではない。
重要なのは、その面談が生活改善につながったかどうかである。

私は福祉事業の現場で、「忙しさ」と「効果」を切り分けることの重要性を何度も痛感してきた。
頑張った支援から、変わった支援へ。
ここに評価設計の核心がある。

短期KPIと長期KPIを分ける

仁蓉まよ

支援には時間軸がある。

短期KPI:相談件数、参加率、満足度
中期KPI:就労定着、医療継続、収入安定
長期KPI:再被害防止、信用回復、自己決定力の向上

この三層構造を持たなければ、短期の数字だけが追われ、長期的な人生の安定が置き去りになる。

支援とは、本来「人生単位」の仕事である。
だからこそ、評価も時間軸で設計する必要がある。

支援者を守るKPI

仁蓉まよ

評価は当事者のためだけではない。
支援者を守るためでもある。

成果が見えない現場では、支援者が「自分の無力さ」を背負い込みやすい。
しかし、もしデータで「改善傾向」が示されれば、それは支援者の心理的安全性を高める。

燃え尽きは、情熱不足ではない。
評価設計の欠如が引き起こす構造的問題である。

行政・企業と共有できる言語へ

仁蓉まよ

支援を持続可能にするためには、行政や企業との連携が不可欠である。

そのとき必要なのが、共通言語だ。
理念だけでは予算は動かない。
だが、KPIが明確であれば、投資対効果(ROI:Return on Investment)が語れる。

女性支援は「コスト」ではなく「将来損失の回避」である。
離職防止、医療費削減、生活保護予防、再被害防止——
これらはすべて、社会全体の経済合理性と直結している。

“測れない価値”をどう扱うか

仁蓉まよ

もちろん、すべてを数字にできるわけではない。

自己肯定感、希望、安心感。
これらは定量化が難しい。

だからこそ、定量(数字)と定性(言葉・事例)を併用する。
データとストーリーの両輪で語る。

私は常に、「一人の物語」と「全体の傾向」を同時に見ることを意識している。
どちらかだけでは、現実は歪む。

善意から制度責任へ

仁蓉まよ

支援が善意に依存している限り、継続性は脆弱である。
誰かが疲れた瞬間、仕組みは止まる。

だが、KPIが設計され、評価が制度に組み込まれれば、支援は“個人の献身”から“社会の責任”へと進化する。

支援とは、本来インフラである。
水道や電気と同じように、人生を下支えする基盤であるべきだ。

善意は出発点であって、ゴールではない。
数字を恐れず、評価を逃げず、制度を設計する。

それこそが、女性支援を「持続可能な社会構造」に変えるための、次の一歩なのである。

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