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労働市場における賃金格差は、個人の努力や能力だけで説明できるものではありません。私が医療・福祉・企業支援の現場で見てきた実態は、むしろ**等級・査定・職務設計という「見えない設計」**が結果を分けているという事実です。
この記事では、感情論ではなく、制度としての評価設計に焦点を当て、なぜ女性が不利になりやすいのか、どこを変えれば是正できるのかを整理します。
賃金は「市場」ではなく「社内設計」で決まる
同じ業界・同じ職種でも、賃金は会社ごとに大きく異なります。理由は単純で、賃金は市場価格ではなく、社内の等級制度と職務定義で決まるからです。
「何をしたら昇給するのか」「どこまでが評価対象か」が曖昧な組織ほど、声の大きい人や長時間労働者が有利になります。
等級制度が“フルタイム前提”になっていないか
多くの等級制度は、無意識のうちに「時間制約がない人」を想定しています。
育児・介護・治療などを担う人は、成果を出しても上位等級に届きにくい。これは能力差ではなく、等級の前提条件が偏っているのです。
査定基準が「定量」より「印象」になっていないか
評価面談で多いのが、「よく頑張っている」「安心感がある」といった抽象的表現です。
しかし印象評価は、バイアスを増幅させます。とくに女性は成果よりも態度評価に回されやすい傾向があり、賃金差の温床になります。
職務設計が“ケア労働”を過小評価している
調整、育成、チームの空気づくり。
これらは組織を回す上で不可欠ですが、職務記述書に書かれていないことが多い。結果として、担っている人ほど評価されない構造が生まれます。
「成果が出るまでのプロセス」は誰が担っているか
成果は突然生まれません。準備、関係構築、リスク回避があって初めて実現します。
その“見えない工程”を担う人が評価対象外になると、賃金格差は固定化します。
賃金格差は「交渉力」の問題だけではない
「交渉しないから低い」と言われがちですが、交渉以前に交渉できる土台(評価根拠)がないケースがほとんどです。
制度が曖昧な組織ほど、個人に責任が押し付けられます。
是正の第一歩は“言語化”である
等級、査定、職務内容を文章で明確にすること。
これだけで、評価の再現性と透明性は大きく上がります。女性だけでなく、組織全体の生産性にも直結します。
賃金格差をなくすとは「公平に評価できる組織」になること
賃金格差是正は、コストではありません。
適切に評価できる組織になるための投資です。
誰が、何を、どこまで担っているのか。それを可視化できた組織から、持続的に人が残り、育ち、成果が生まれます。
労働市場の課題は、個人の努力ではなく、設計で変えられるのです。
