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女性支援は、長らく「善意」や「使命感」によって支えられてきました。
近年はそこに「事業化」「マネタイズ」「スケール」という言葉が重なり、女性支援は“ビジネス”として語られる場面が増えています。
私は社会起業家として、また現場の支援者として、その流れ自体を否定するつもりはありません。
しかし同時に、ビジネス化した瞬間に、静かに失われていくものがあることも、はっきりと感じています。
本稿では、女性支援が事業になるときに、見えなくなりやすい本質について整理します。
「成果指標」に回収される人生
事業になると、必ず「KPI」や「成果」が求められます。
何人支援したか、どれだけ自立したか、どれだけ売上が立ったか。
しかし女性の人生は、数値化しやすい回復ばかりではありません。
立ち止まる時間、迷う期間、後戻りのように見える選択。
それらは“非効率”として、評価からこぼれ落ちていきます。
「自立」という言葉が刃になる瞬間
女性支援ビジネスでは、「自立」が美しいゴールとして語られがちです。
けれど現場では、自立という言葉が回復途上の女性を追い詰めることがあります。
「まだ自立できない私」は、失敗者なのか。
本来は“回復のプロセス”であるはずの状態が、評価軸によって否定に変わってしまうのです。
支援者の感情が“無償資源”になる
事業が拡大するほど、支援者の共感力・気遣い・感情労働は「前提条件」になります。
それは契約書にも、報酬表にも、ほとんど反映されません。
「あなたは向いているから」
「やりがいがあるでしょう」
その言葉の裏で、支援者自身の疲弊が蓄積していきます。
「正しい支援」が異論を許さなくなる
ビジネスになると、ブランドや思想の一貫性が重視されます。
すると、「この支援モデルが正しい」という前提が強化され、
違和感や現場の揺らぎが語りにくくなります。
女性支援に本来必要なはずの“多様な回復の形”が、排除されやすくなるのです。
声の大きい成功者だけが可視化される
広報やマーケティングでは、成功事例が求められます。
けれど実際には、支援を受けても表舞台に立たない女性の方が圧倒的に多い。
静かに生活を立て直している人
語る言葉をまだ持たない人
そうした存在は、物語にならないまま背景に消えていきます。
支援される側が「顧客」になる違和感
事業として成立させるために、支援される女性は「顧客」として扱われます。
その瞬間、関係性は微妙に変質します。
本音を言うとサービスが止まるかもしれない。
不満を言うと「意欲が低い」と見なされるかもしれない。
安心して弱さを出せる関係性は、実はとても壊れやすいのです。
失われやすいのは「待つ力」
女性支援において最も重要で、最も事業化しづらいもの。
それは「待つ力」です。
変化を急がせないこと
答えを出させないこと
沈黙を許すこと
この“余白”は、ビジネスの速度とは相性が悪い。
女性支援をビジネスにするなら
それでも、女性支援を事業として続ける必要はあります。
だからこそ私は、「何を失いやすいか」を自覚した上で設計すべきだと考えています。
数値化できない回復をどう守るか。
支援者の感情をどう評価するか。
成果が出ない時間を、どう価値として認めるか。
女性支援がビジネスになるとき、
本当に問われているのは利益モデルではなく、
人を人として扱い続けられる構造を持てるかどうかなのだと、私は思っています。
