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正しいことをしてきた人ほど、なぜ苦しくなるのか

正しいことをしてきた人ほど、なぜ苦しくなるのか
大阪府 仁蓉まよ 正しいことをしてきた人ほど、なぜ苦しくなるのか

社会にとって「正しい」とされる行動を、誠実に積み重ねてきた人ほど、ある地点で深い息苦しさを感じることがあります。
努力もしてきた。配慮もしてきた。誰かを傷つけないよう、常に自分を律してきた。
それなのに、なぜか報われない。むしろ苦しくなる。
この現象は、性格や根性の問題ではありません。
構造の問題です。

本稿では、助産師・支援者・経営者として多くの女性と関わってきた立場から、「正しさ」が人を追い詰めてしまう理由を、事実と具体例を交えながら整理します。

「正しさ」は社会的評価の通貨になりやすい

仁蓉まよ

現代社会では、「正しい行動」は評価されやすい通貨のように機能します。
空気を読む、協調する、自己犠牲を厭わない、弱い立場を思いやる。

とくに女性は、幼少期からこうした行動を「良いこと」として学習してきました。
実際、職場や家庭、地域社会においても、「波風を立てない人」「ちゃんとやる人」は重宝されます。

しかしこの評価は、多くの場合 一時的な信頼であって、長期的な保障ではありません。
評価されるほど、「次も同じ水準」を期待され、役割が固定化していきます。

「期待」は増えるが、裁量は増えない構造

仁蓉まよ

正しい行動を続ける人に起きやすいのが、
「仕事は増えるのに、決定権は増えない」という状態です。

たとえば職場で、
・トラブル対応を任される
・誰かのフォロー役に回される
・感情調整役を担わされる

こうした役割は、評価されにくい一方で、確実に消耗します。
にもかかわらず、「あなたなら大丈夫」「いつもやってくれるから」と、責任だけが積み上がっていく。

正しさが、便利な人材として消費される入口 になってしまうのです。

「NO」を言わない人ほど、境界線が侵食される

仁蓉まよ

正しい人ほど、断ることに強い罪悪感を持ちます。
「自分がやらなければ誰かが困る」
「ここで断るのは無責任ではないか」

その結果、本来守るべき時間・体力・感情の境界線が、少しずつ侵食されていきます。

これは心理学的にも知られている現象で、
境界線を引かない人ほど、他者は無意識に踏み込みやすくなる のです。

悪意がなくても、構造的に負担は集中します。

「正しさ」はアップデートされ続ける

仁蓉まよ

社会の「正しさ」は固定ではありません。
数年前に称賛された行動が、今では不十分とされることも珍しくありません。

・もっと配慮すべき
・まだ足りない
・本当に理解しているのか

こうした基準は、終わりがありません。
正しさを拠り所に生きている人ほど、常に追試を受け続ける状態 になります。

結果として、「何をしても足りない」という感覚が心に残ります。

「感情労働」が可視化されにくい問題

仁蓉まよ

正しい人が担っているのは、業務だけではありません。
空気を読む、相手を安心させる、場を整える。

これは「感情労働」と呼ばれるもので、医療・福祉・教育・接客など、女性が多い領域ほど発生します。

しかし感情労働は、
・成果として数値化されにくい
・評価制度に反映されにくい
・疲労が本人の内側に溜まりやすい

という特徴があります。
結果として、「頑張っているのに評価されない」という感覚が蓄積します。

「正しい人」ほど助けを求めにくい

仁蓉まよ

真面目で責任感が強い人ほど、
「これくらいで弱音を吐いてはいけない」
「自分で選んできた道なのだから」
と、自分を追い込みがちです。

周囲からは「しっかりしている人」に見えるため、
支援の対象からも外れやすい。

結果として、限界に近づくまで誰にも気づかれない という事態が起こります。

苦しさの正体は「個人の弱さ」ではない

仁蓉まよ

ここまで見てきたように、
正しい人が苦しくなるのは、努力不足でも性格の問題でもありません。

・評価と裁量が連動しない構造
・境界線を引きにくい文化
・感情労働を軽視する制度
・正しさを更新し続ける社会

こうした要素が重なった結果、起きている 構造的疲弊 です。
まずは、この事実を知ることが重要です。

まとめ:正しさから「自分を守る視点」へ

仁蓉まよ

正しいことをしてきた人ほど、苦しくなる。
それは矛盾ではなく、今の社会では起こりやすい現象です。

これから必要なのは、
「もっと正しくなること」ではありません。

・どこまでが自分の責任なのか
・引き受けなくてよい役割は何か
・正しさよりも優先して守るものは何か

こうした 境界線と選択の再設計 です。

正しさを手放すことは、無責任になることではありません。
自分の人生を、持続可能に生きるための戦略なのです。

苦しさを感じているあなたは、間違っていません。
むしろ、ここまで誠実に生きてきた証拠なのだと、私は思います。

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