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支援の現場にいる女性ほど、気づけば「いつでも支える人」として扱われがちです。けれど本来、支援とは優しさだけで回るものではなく、持続させるための設計が要ります。特に近年は、SNSの“正しさ”が可視化されるほど、支援者が燃え尽きやすい構造が強まっています。
本稿では、「支援する側が壊れないための境界線(バウンダリー)」を、医療・福祉・SNS・組織の視点から整理し、“支援が続く社会”のつくり方を提案します。
優しさは枯渇する
支援に必要なのは共感ですが、共感は無限ではありません。助産師として周産期の現場にいた頃も、福祉事業を運営する今も、「助けたい」が強い人ほど、自分の限界を後回しにしがちだと感じます。
優しさが枯渇すると、いちばん守りたい相手に優しくできなくなります。これは個人の弱さではなく、設計の問題です。
“境界線”は冷たさではない
境界線とは「線を引いて突き放すこと」ではなく、「できる支援を明確にすること」です。
何をする/しない、いつ対応する/しない、誰と誰の課題を分ける――これを言語化するほど、支援は安定します。境界線がない支援は、実は“善意の属人化”で、仕組みとして脆いのです。
支援者が抱える“二重の沈黙”
支援者は、当事者の声を受け止めながら、自分の苦しさは表に出しにくい。
「支援者なのに弱音を吐くのは違う」「忙しいのは当然」――こうした空気が、支援者を黙らせます。12/22の記事の「守られる側になる難しさ」は、まさにこの構造とつながっています。
SNSは“善意の過労”を加速させる
SNSは支援を広げる力を持つ一方で、「即レス」「説明責任」「正しさの審査」が支援者に集中しやすい。
誤解されたくない、炎上させたくない、その緊張が慢性的なストレスになります。12/19の「責任設計」は、ここで真価を発揮します。発信者が壊れないルールが必要です。
“無料で無限”を期待させない
支援活動が長く続く人は、最初に「提供範囲」を決めています。
無料相談の線引き、返信時間、緊急対応の条件、紹介できる先――これを決めることは、冷たさではなく、相手の自立を守ることにもなります。
「全部受け止める」より、「必要な支援につなぐ」ほうが、結果として救える人は増えます。
組織は“個人の献身”に甘えてはいけない
企業や行政が女性支援を掲げるなら、現場の担い手が燃え尽きない設計が必要です。
相談窓口の属人化、担当者の孤立、評価されない感情労働――これらを放置すると、支援はブランドではなく“搾取”になります。支援者の休息や交代、スーパービジョン(第三者の振り返り支援)を制度として用意すべきです。
境界線は“信頼”を育てる
境界線を引くと、最初は「距離ができた」と感じる人もいます。けれど、線があるから関係が続きます。
ルールが明確な人は、頼る側にとっても安心です。曖昧な優しさより、予測できる優しさのほうが、信頼は深くなるのです。
支援が続く社会は“循環”でできる
支援が持続する社会とは、「支える人」だけに負担が偏らず、役割が循環する社会です。
支援者が休むこと、守られること、時に誰かに頼ること――それは支援の質を落とすどころか、支援の未来を守ります。
私たちは、“正しさ”で支援を縛るのではなく、“続く設計”で支援を強くしていく必要があるのです。
