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女性起業家への支援というと、融資や補助金、ビジネスコンテストを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、本当に事業を育てるのは、一度きりの支援ではなく、「商品やサービスが継続して購入されること」です。
国や自治体が物品やサービスを購入・委託する仕組みは「官公需」、広い意味では公共調達と呼ばれます。国は官公需法に基づき、中小企業の受注機会を確保するための基本方針を毎年度策定しており、令和8年度(2026年度)の基本方針も公表されています。
私は、女性起業支援を「起業するまで」で終わらせるのではなく、「事業が継続して成長する仕組み」へ発展させる必要があると考えています。
現在、日本には女性経営者だけを優先する公共調達制度はありません。しかし、中小企業支援制度やスタートアップ調達など既存の制度を活用し、女性起業家が公平に行政市場へ参入できる環境を整えることは十分可能なのです。
公共調達は「補助」ではなく「取引」
公共調達とは、行政が税金を使い、民間事業者から必要な商品やサービスを購入する仕組みです。
対象は備品だけではなく、システム開発、広報、研修、イベント運営、デザイン、福祉サービスなど幅広い分野に及びます。
行政契約では公平性・透明性・競争性が重視され、一般競争入札が原則です。
価格だけで決める最低価格落札方式だけでなく、価格と技術力を総合的に評価する総合評価落札方式も採用されています。
また、業務内容によっては公募型プロポーザルにより提案内容を審査して契約候補者を選ぶ場合もあります。
女性起業家にとって重要なのは、公共調達を「補助金」ではなく、「行政へ価値を提供するビジネス」と捉えることです。
行政との契約実績は、その後の企業や自治体との取引にもつながる大きな信用になります。
国は中小企業の受注を後押ししている
公共調達は大企業だけの市場ではありません。
国は官公需法に基づき、中小企業の受注機会を拡大する方針を毎年度示しています。
また、中小企業庁は契約実績や施策を公表するとともに、政府や自治体の案件を検索できる「官公需情報ポータルサイト」を運営しています。
このポータルでは2024年4月以降の案件検索が可能となり、2025年6月からはAI検索機能の実証も始まりました。
制度は整いつつありますが、女性起業家の多くは、案件の探し方や仕様書の読み方、入札参加資格などを学ぶ機会が十分とは言えません。
女性起業支援には、起業支援だけでなく、公共調達へ参加するための実務支援まで含めることが重要です。
行政が「最初の顧客」になる価値
政府のスタートアップ育成5か年計画では、創業10年未満の中小企業との契約実績が2020年度は0.83%・777億円であったことを踏まえ、契約比率を3%以上、約3,000億円規模へ拡大する目標が示されています。
これは、行政が新しい企業の「最初の顧客(ファーストカスタマー)」になることを重視しているからです。
女性起業家が取り組む子育て、介護、健康、教育、福祉などは、行政課題とも親和性が高い分野です。
一方で、「女性向け事業だから採用される」のではありません。
社会課題への効果や価格、実施体制、継続性などを客観的に示すことが求められます。
東京都が進める新しい調達モデル
東京都では、スタートアップの新商品やサービスを公共調達につなげる「ファーストカスタマー・アライアンス」を推進しています。
自治体が認定したサービス情報を共有し、条件を満たせば政策目的随意契約制度も活用できる仕組みです。
現在は、東京都、八王子市、文京区、墨田区、大田区、渋谷区、豊橋市(愛知県)、堺市(大阪府)、福岡市(福岡県)などが参画しています。
女性起業家にとっても、一つの自治体で得た実績を他自治体へ展開できる可能性が広がる点は大きな魅力です。
今後は、女性起業支援事業と公共調達制度をより有機的に結び付けることが期待されます。
大阪府の新商品購入制度
大阪府では、「中小企業新商品購入制度」を実施しています。
新規性の高い商品やサービスを認定し、府の機関が一定条件のもとで随意契約による調達を行える制度です。2026年度募集は6月23日から8月14日まで実施されています。
ただし、認定されても購入や確約が保証されるわけではありません。
それでも、行政から認定を受けることで商品の信頼性や市場性を示しやすくなり、行政機関への提案機会も広がります。
女性起業家も、「女性向け商品」で終わるのではなく、どの行政課題を解決できるのかを明確に伝えることが重要です。
参入を阻む「制度の壁」
公共調達制度があっても、参加できなければ意味がありません。
東京都が公表したスタートアップ向け調査でも、入札制度に関する知識不足や、専門用語の分かりにくさ、書類作成の負担などが参入の課題として示されています。
入札では、納税証明、登記情報、財務資料など多くの書類が必要になる場合があります。
行政には、初心者向け説明会や電子申請、相談窓口の充実など、より参加しやすい仕組みづくりが求められます。
起業支援も、起業で終わるのではなく、公共調達へ挑戦するところまで伴走することが大切です。
女性起業支援を次の段階へ
日本の公共調達制度は、公平性を重視するため、女性経営者だけを優先する制度ではありません。
しかし、女性起業家が制度へ参加しやすくする支援は十分に実現できます。
官公需情報ポータルの活用、入札参加資格取得支援、行政課題とのマッチング、プロポーザル作成支援などは、その代表例です。
また、女性起業家自身も、「女性向けサービス」という説明だけではなく、行政課題をどう解決できるかという視点で事業を伝えることが、公共調達では大きな強みになります。
公共調達は女性起業を育てる未来投資
女性起業家を育てるために必要なのは、応援の言葉ではなく、「継続して選ばれる仕組み」です。
日本には、官公需制度、スタートアップ調達、新商品購入制度など、行政が新しい事業を支える仕組みがすでに存在しています。
重要なのは、女性起業家を特別扱いすることではありません。
公平な競争の機会を確保し、社会課題を解決する優れた事業が正当に評価され、行政という「最初の顧客」と出会える環境をつくることです。
私は、女性起業支援を「起業者数を増やす政策」から、「地域に必要とされる事業を育てる政策」へ進化させることが、日本の地域経済と女性の経済的自立の両方につながると考えています。
行政のお金は単なる支出ではありません。
地域課題を解決し、新しい雇用と信用を生み出す「未来への投資」なのです。
