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私は助産師として医療現場に立ちながら、企業PR顧問や行政との協働を経験してきました。そこで痛感するのは、「プレコンセプションケア(将来の妊娠・出産に備えた健康管理)」が、個人だけでなく 企業・自治体にとっても重要な“経営課題” になっているということです。
しかし、多くの組織が「何から始めればいいのか」がわからないまま留まってしまっています。
本稿では、企業・行政が 明日から実践できる具体的な施策 を、現場視点でお伝えします。
プレコン支援は“女性支援”ではなく“未来投資”
プレコンセプションケアは、妊娠を希望する女性だけのテーマではありません。健康管理・労働環境・働き方・医療アクセスなど、多領域に影響する“生活基盤の支援”なのです。
企業にとっては 離職予防・生産性向上・採用戦略 に、行政にとっては 少子化対策・地域活性化 に直結する未来投資でもあります。
施策①:健康診断に「女性特有項目」を追加する
企業が最もすぐに取り組めるのが、健康診断の項目拡充です。
たとえば
月経トラブルの有無
貧血・甲状腺・ホルモン関連のチェック
妊孕性に関する基礎知識の提供
は、プレコン支援に直結します。
健診後のフォロー面談を整備するだけでも、女性の健康課題の見える化が進むのです。
施策②:女性の「時間設計」を支える働き方制度
妊娠・治療・通院は“時間の戦略”です。
企業は次のような制度を整えると効果が高まります。
生理痛・婦人科通院のための時間単位休暇
不妊治療のための柔軟なシフト・リモートワーク
緊急受診が必要な際のサポート体制
時間の余白をつくることが、キャリアの継続を助けます。
施策③:社内研修で「男女共通の知識」にする
プレコンケアは女性だけが学ぶものではありません。
管理職・男性社員・新人研修に「リプロダクティブヘルス教育(性と生殖の健康)」を取り入れることで、
無理解による不利益の減少
課題を共有できる職場風土の形成
正しい知識を前提にしたマネジメント
が可能になります。
偏見や無知による“沈黙の負担”を減らす効果も非常に大きいのです。
施策④:行政は「医療×キャリア支援」を一体化させる
自治体の場合、保健師の母子保健領域と、雇用政策・産業振興を切り離すケースが多く見られます。
しかし住民の人生は一体です。
婦人科アクセス
不妊治療費助成
キャリア相談
地域企業との連携
を一つの窓口でつなぐことで、女性は“相談迷子”にならなくなります。
施策⑤:単身女性・非婚層を対象にした健康教育を強化
プレコンは、結婚・妊娠を前提にしない健康管理でもあります。
行政が
単身女性
非婚女性
キャリア志向の20〜40代
に向けて健康教育を発信することは、地域の未来を支える最重要施策です。
「いつか」ではなく「今の健康」を守る視点が必要なのです。
施策⑥:男性の健康支援を欠かさない
妊娠の成立には男女双方の健康が等しく関わります。
企業が
男性の生活習慣改善支援
精神的ストレスケア
不妊治療の男性側支援
を整えることは、女性の負担軽減にもつながります。
“女性だけに負荷が偏る構造”を変えることが、職場の健康経営の第一歩です。
施策⑦:企業・行政・医療の「三者連携モデル」をつくる
最も効果が高いのは、企業と行政が医療機関と連携するモデルです。
企業:働き方・制度設計
行政:教育・支援制度
医療:専門知識・健康管理
この三者が協働することで、女性たちは安心してキャリアを続けられます。
地域としての競争力も高まり、持続可能な“人づくり”につながるのです。
