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「ケア経済」——福祉を“成長産業”に変える時代

「ケア経済」——福祉を“成長産業”に変える時代
大阪府 仁蓉まよ 「ケア経済」——福祉を“成長産業”に変える時代

私は助産師、福祉事業経営者として、ケアの現場と政策・技術の交差を見てきました。
日本でも、技術革新と制度支援が重なり、ケア分野で「導入済み」「実証済み」の取り組みが確実に増えています。

本稿では、2025年10月時点で実際に導入または実証されている事例をもとに、ケア経済を語る8つの視点をお伝えします。

世界モデルではなく、国内でも「導入済み」の技術が動き始めている

仁蓉まよ

世界動向も重要ですが、日本国内でも導入・実証済みの例が確実にあります。
たとえば、チャーム・ケアが運営する有料老人ホームでは、生成AIを用いた 「AIケアプランナー」 の実証実験が進んでおり、ケアマネジャーのケアプラン作成時間を月 35 時間程度削減する見込みが報じられています。
また、自治体・施設レベルで、介護ロボット・見守りセンサーを導入して「異常検知・転倒予測」に成功している事例も報告されています。

このように、国内で「実証済み」「部分導入済み」の技術が増えており、ケア経済はすでに“実践フェーズ”に入っていると言えるのです。

介護分野:AI・ロボット・見守り導入の具体事例

仁蓉まよ

以下は、2025年時点で実際に導入または実証されている介護技術の事例です:
アイオロス・ロボット:夜間巡視や除菌作業を自動で行うロボット。介護現場で稼働実例があります。

A.I.Viewlife(見守りロボット):転倒など危険動作をAIで検知し、事故防止に寄与。導入によって夜勤ストレス軽減という効果を報告している施設もあります。

AIケアプラン支援(SOINなど):CDI の AI ケアプラン支援システム「SOIN」は、4.5万件以上のケアプランデータを学習し、ケアマネジャーの作業時間を大幅に削減する実証実績を公表しています。

生成AIで記録・プラン自動化:AWS 等を使った現場で、記録業務時間を 80% 削減し、利用者との関わり時間を 25% 拡大したという発表も報じられています。

DX・モニタリング:入居者の健康データを AI 分析して異常を早期察知する仕組みを導入する施設も複数報告されています。

これらは、ケア分野における技術導入の「入り口」から中核部分まで、すでに現場に根を下ろし始めている証拠です。

保育現場での ICT・AI導入:安全性と効率化の実証例

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保育分野でも、技術導入の実例があります。特に注目すべきものを以下に挙げます。
AI午睡(お昼寝)見守りサービス hana-an®:お昼寝中の子どもの体動・姿勢を AI が解析し、異常(うつ伏せ寝など)を検知した際にアラートを出すシステム。保育 ICT 安全部門で大賞を受賞。

「ルクミー / Lookmee」保育 ICT システム:AI 午睡見守り、日誌自動作成、連絡帳管理機能を備え、葛飾区の小菅保育園・東広島市暁保育所などで導入実績。

ベビモニとの連携事例:保育園でカメラ型午睡チェックシステム「ベビモニ」と保育 ICT「コドモン」の連携で安全性と運用効率を両立させた導入実績。

保育 ICT 導入モデル事業(国や自治体支援):厚生労働省のモデル事業において、認定こども園・保育所での ICT 導入・効果検証が進んでおり、保育士の事務作業時間を 4 割程度削減した報告もあります。

保育・業務負担軽減の意義:保育の現場では ICT化による業務負担軽減が強く期待されており、2025 年の調査では、保育業務の ICT 化が保育士の離職抑制にも寄与する可能性が示されています。

これらの導入例は、保育者の負担軽減と子どもの安全確保という二重の目的を同時に追う技術を現場へ届けています。

医療・連携分野における実証例

仁蓉まよ

医療×ケアの接点でも、技術導入・実証事例が見られます:

病児保育ネット予約・遠隔診療連携:栃木県などで、ICT を使った病児保育予約システムと遠隔診療の連携実証が進められています。利用者の利便性と運営効率を高める取り組みです。

医療と保育/ケアの融合施設:特定施設では保育・看護・ケアが一体化したハイブリッド施設運営の初期導入も見られ、医療ケアと日常支援を重ねるモデルが模索されています(ただし、公開データは限定的)。

生成AIを使った介護―医療データの統合・予測分析:ケアプラン支援や予後予測において、医療記録+介護記録を AI 分析する実証研究や PoC が報じられています(業界レポート等)

これらはまだ数は多くないものの、医療・ケア連携の「実証フェーズ」に入っていることを示します。

起業・地域モデルで見える「ケアを事業化」した先行例

仁蓉まよ

技術導入だけでなく、地域でケアを事業資源にする動きも出ています。
以下は現実に存在する先進例:
保育 ICT を軸とした起業モデル:ICT を中心に、保育所運営支援やクラウド保育サービスを提供する企業が生まれており、実際に全国展開を始めています(例:ユニファ・ルクミーなど)

カフェ併設型介護施設:地方で「介護×地域交流スペース」を併設するモデルが報道されています(地域密着モデルとして注目)。

アート・文化 × ケアの融合:障がい者アート作品の発信・販売をケア施設運営と結びつけ、収益化に成功している福祉事業所もあります。

データ・サービス提供型事業:ケア施設や保育園に対し、見守りデータ・分析サービスを提供するビジネスを展開している企業も増えています。

これらは、ケアそのものを「収益構造」に変える試みであり、地域循環をつくる芽となります。

教育・研修フェーズでの技術導入・実証プログラム

仁蓉まよ

将来のケア経済を担う人材を育てる場にも、技術導入・実証の動きがあります。

保育・福祉教育に ICT 導入:看護・福祉系大学・専門学校で、ICTツール・遠隔演習・AI活用を授業に取り入れる実証授業例が報告されています(教育機関の公表事例)。

自治体モデル事業として研修+導入:地方自治体が「ケア DX 導入支援研修」を公募し、現場職員に ICT 活用研修と実機導入をセットで支援する事業が複数県で実施されています。

保育 ICT モデル事業:厚労省モデル事業で、ICT 導入した保育所で教育プログラム併設をし導入後の定着化を検証するもの。(厚生労働省)

教育と実践をつなぐこうしたプログラムが、技術導入のリスクと障壁を低くしています。

ケア領域を牽引する人材と女性リーダーの活躍(実証例含む)

仁蓉まよ

技術導入があっても、それを支える人の力がなければ循環は起きません。以下は、現場でリーダーシップを発揮している具体例:

介護スタートアップの女性 CEO:福岡県の介護スタートアップでは、女性 CEO が率いるチームが介護人材マッチングアプリを導入・拡大し、1年で登録者数を2倍にした実績があります(報道例)。

保育 ICT 推進企業の女性リーダー:保育 ICT「ユニファ」や「ルクミー」などは、女性経営陣が現場視点を取り入れたプロダクト開発をリードしており、全国への導入拡大も展開中。

現場から政策提言を行う女性職員:技術導入を経験した保育・介護現場の女性リーダーが、自治体や省庁の DX 推進や補助金制度設計に参加している事例も散見されます(自治体報告書等)。

こうしたリーダーたちが、技術を“現場実装”に結びつけ、持続性を支える基盤を形成しています。

ケアを産業化する未来図は、もう“始まっている”

仁蓉まよ

本稿で紹介したように、2025年10月時点で 導入済み/実証済み の事例は複数存在します。
技術(AI・ロボット・ICT)と制度(補助金・モデル事業支援)が重なり合う地点で、ケアは“成長分野”へと変わり始めているのです。

ケアを産業化するというと遠い未来の話のように聞こえるかもしれません。
しかし、すでに現場では、記録効率化、見守り精度向上、プラン作成支援、起業モデル化が動いています。
これらを結びつけ、拡大させることが、「ケア経済」の本質的展開です。

ケアに価値を見いだし、技術と人が融合する経済圏をつくること。
それは、私たちが未来世代に残す「安心と選択肢のある社会」の構図なのです。

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