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私がこれまで女性支援やキャリア形成に携わってきた中で痛感するのは、制度や法律だけでは“真のジェンダー平等”は実現しないということです。
社会の枠組みを変えることも重要ですが、その根底には「人の感情」「共感」「理解」といった“感情知性(Emotional Intelligence)”の成熟が必要なのです。
本稿では、感情知性を軸にした新しいジェンダー平等の進め方について、医療・教育・ビジネスの視点から考察していきます。
制度の平等ではなく、“感情の平等”へ
法律や制度の整備が進んでも、職場や家庭の中で感じる「見えない壁」は依然として存在しています。
それは、性別役割への固定観念や、“共感の欠如”から生じるものです。
感情知性とは、他者の立場や感情を理解し、適切に関わる力。
ジェンダー平等を制度から「文化」へと昇華させるためには、この“感情の平等”こそが不可欠なのです。
「理解されていない」と感じる瞬間が、離職を生む
医療現場でも企業でも、女性がキャリアを中断する大きな要因の一つが、「理解されていない」という感覚です。
制度的には産休や育休があっても、心理的なサポートが欠けていれば、職場復帰の意欲は低下してしまいます。
この「理解の欠如」を防ぐには、管理職や同僚が“感情知性”をもって関わることが重要です。
感情の理解が、制度を生かす土台になるのです。
感情知性は、リーダーシップの新しい基準
これからのリーダーシップに求められるのは、成果を上げる力だけではなく、“人を支える力”です。
感情知性の高いリーダーは、メンバーの状況を察し、適切に声をかけ、柔軟に対応できます。
それは「優しさ」ではなく、「関係性をマネジメントする知性」なのです。
ジェンダー平等を進める組織には、感情知性に基づくリーダー育成が欠かせません。
“共感の文化”を育てることが、組織の競争力になる
データや効率を重視する時代だからこそ、共感力が差別化の要素になります。
社員一人ひとりが安心して意見を出せる“心理的安全性”のある職場は、創造性と生産性の両立を実現します。
特に女性が多様なライフイベントを経ながら働く社会では、“共感の文化”こそが最大の経営資源なのです。
教育現場で育てたいのは、“感情の言語化力”
子どもたちが将来ジェンダーに縛られずに生きていくためには、感情を表現し、共有できる力が必要です。
「悲しい」「不安」「うれしい」といった感情を丁寧に言葉にする経験が、他者理解の土台を育てます。
感情知性は、早期教育でこそ育つ社会スキル。
これは、学力よりも長期的に人生を支える“人間力”なのです。
“男性支援”にも感情知性を
ジェンダー平等を女性だけの課題と捉える時代は終わりました。
男性が「弱さ」や「悩み」を語れない社会構造こそが、平等を阻む根本原因のひとつです。
男性が感情を安心して表現できる環境を整えることは、女性支援と同じくらい重要。
感情知性を軸にした“ジェンダー協働”が、これからの社会基盤になるのです。
感情知性は、テクノロジー時代の“人間力”
AIやデジタルが発展するほど、失われやすいのが“感情を感じ取る力”です。
効率と合理性の先にある「人の痛み」や「ぬくもり」を理解できる人こそ、これからの時代に求められるリーダー。
感情知性は、AIには置き換えられない“人間らしさ”の中核なのです。
感情知性がつくる“やさしさの経済圏”
共感や思いやりに基づいた商品やサービスは、顧客の信頼を長期的に育てます。
いま注目されている“共感経済”や“ケア経済”は、まさに感情知性が社会に浸透した形です。
ジェンダー平等は、数字や制度ではなく「関係性の質」から始まる。
その本質を理解し、“やさしさを戦略に変える時代”が、すでに始まっているのです。
