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私はこれまで、助産師として命の現場に立ち会い、また福祉・地域・医療・行政と連携しながら、女性たちのライフデザインを支援してきました。
そのなかで改めて痛感するのは、「防災」と「キャリア」は切り離せないということです。
災害対応の現場では、瞬時の判断力、共感力、チームマネジメント力が問われます。
それはまさに、女性たちが日々の仕事や生活のなかで磨いてきた意思決定力そのものなのです。
本稿では、女性が防災の現場で発揮するリーダーシップの本質と、その経験がキャリア形成にどうつながるのかを考えます。
「防災」は女性のキャリア資産になる
防災と聞くと、防火訓練や避難所運営など、行政や男性中心の領域という印象を持つ方も少なくありません。
しかし実際には、避難所や地域コミュニティで最も多く動くのは女性たちです。
子ども・高齢者・障がい者など、多様な人々のニーズに気づき、支援の優先順位を瞬時に判断する力。
これこそ、女性が日常的に家庭や職場で培ってきた「マルチタスク型の意思決定力」です。
このスキルは単なる防災対応にとどまらず、キャリア資産として社会全体が再評価すべきものなのです。
女性の「ケア視点」が危機管理を変える
災害時、物資の確保や避難経路の整備だけでなく、「心のケア」「プライバシー」「月経用品」「授乳スペース」など、
現場の細やかな配慮をリードしているのも女性たちです。
ケアの視点があることで、避難所の環境改善やトラブル防止にもつながります。
これは単なる“やさしさ”ではなく、持続可能な危機対応の戦略そのもの。
女性が担うケアは、防災においても「命を守るマネジメント」として位置づけるべきなのです。
リーダーシップは「役職」ではなく「行動」に宿る
防災現場では、指示を待つよりも、自ら考え行動するリーダーが求められます。
女性たちは家庭や地域で、その力を自然と発揮しています。
例えば、地域の避難所で物資を仕分ける、避難者の声を拾う、子どものケアにあたる——
それらはすべて「現場型リーダーシップ」の発露です。
防災活動は、女性が自分の判断力を社会のなかで可視化できる場でもあるのです。
防災教育は「女性の意思決定訓練」の場
近年、学校や企業で防災教育が広がっていますが、これを“避難訓練”にとどめるのはもったいない。
実際には、「状況を分析し、限られた情報で最善を選ぶ」という訓練が、女性のキャリア教育にも直結します。
命を守る判断を自分で下す力は、仕事や人生の選択でも同じ構造です。
防災教育は、女性が“自分の意思で動く力”を育てる最前線でもあるのです。
地域防災における女性ネットワークの力
女性たちの横のつながりは、災害時の情報共有・支援体制構築に欠かせません。
SNSや地域コミュニティで築かれたネットワークが、非常時にはライフラインとなります。
行政・企業・地域がこの女性ネットワークを防災資源として活かせば、より強靭で包摂的な地域防災が実現できます。
医療職・福祉職としての防災参画
助産師・看護師・保健師といった医療職にとって、防災は専門職キャリアの延長線上にあります。
避難所での健康管理、妊婦・乳幼児支援、高齢者ケアなど、医療と防災の融合領域は広がり続けています。
私自身、災害対策研修で医療職の女性たちが見せる的確な判断力に、毎回圧倒されます。
防災参画は、医療職が社会的リーダーへと成長するきっかけにもなります。
「備えること」は“生き方”をデザインすること
防災とは、単に災害に備える行為ではありません。
自分の命、家族の生活、社会の持続可能性をどのようにデザインするか——それが“防災キャリア”の核心です。
「もしもの時どう生きるか」を考えることは、「今どう生きるか」を明確にする行為でもあります。
女性の防災参画を“社会戦略”に
防災における女性の参画は、社会課題解決と経済戦略の双方に資する行動です。
彼女たちの意思決定力、共感力、協働力は、危機対応のみならず、平時の地域経済にも波及します。
行政や企業は、防災を“女性活躍のフィールド”として捉え直すべき時代にきています。
「防災キャリア」は、未来を守る新しい女性の生き方のかたちなのです。
