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私はこれまで助産師として命に寄り添い、また社会起業家として女性のキャリアや経済自立を支える活動をしてきました。その中で、災害やパンデミックといった社会的危機が、最も脆弱な立場にある女性たちの生活を直撃する現実を何度も目の当たりにしてきました。
東日本大震災や新型コロナの影響を振り返ると、女性支援は「一時的なケア」ではなく「社会の持続性を守る基盤」であることが明らかです。本稿では、危機の中で浮かび上がる女性特有の課題と、それを社会全体で支えていく戦略について考えてみたいと思います。
危機下で顕在化する“ジェンダー不均衡”
災害やパンデミック時には、住居・収入・安全といった生活基盤が一気に揺らぎます。特に女性は非正規雇用やケア労働に従事する割合が高く、経済的に打撃を受けやすいのです。また、避難所や在宅療養の環境では、プライバシーや生理・妊娠出産に関する支援が後回しになりがちで、深刻な健康リスクが生じやすい現実があります。
パンデミックが浮き彫りにした“ケアの不均等”
新型コロナの流行期には、多くの女性が家事・育児・介護を担いながら在宅勤務や失業の影響を受け、精神的にも追い込まれるケースが増えました。
「ケアの担い手」が十分に支えられない状況は、家庭だけでなく社会全体の機能不全を招くことが明らかになったのです。
“女性の声”が政策に届きにくい課題
危機対応の場面では、男性中心の意思決定構造が強く残っています。そのため、避難所運営や医療資源の配分において、女性の声が十分に反映されにくいのです。
「誰の視点で政策を設計するか」が、被災後の回復力を大きく左右します。
災害時の“生理・妊娠・出産”支援の必要性
避難所で生理用品が不足したり、妊産婦が適切な医療にアクセスできない事例は繰り返されています。これは単なる物資不足ではなく、支援設計の視点に女性が含まれていないことの表れです。
女性の健康ニーズを最優先課題として組み込むことは、命を守るための基本戦略です。
“経済自立”こそ最大の防災対策
被災後に最も回復が早いのは、経済的な選択肢を持つ人々です。女性が日頃から金融リテラシーやキャリアの多様性を確保しておくことは、災害対策でもあるのです。
災害・パンデミック後の再建は「経済力のある人」から始まります。だからこそ、女性の経済自立は平時からの“社会防災”として位置づけるべきです。
地域に根ざした“女性ネットワーク”の力
災害時に支援の拠点となるのは、地域でつながっている女性同士のネットワークです。物資の融通、子どもの預け合い、情報交換など、小さな助け合いが大きな命綱になります。
行政がこの自発的ネットワークを尊重し、資金や制度で支える仕組みが必要です。
テクノロジーが拓く“支援の見える化”
AIやデジタル技術を活用すれば、女性のニーズをリアルタイムで把握し、支援を迅速に届けることが可能です。生理用品や母子ケアの不足状況をデータで可視化し、効率的に配分できるようにすることは、次世代の防災戦略となるでしょう。
“女性支援”は社会の持続可能性を守る基盤
災害やパンデミックは、一見すると突発的な出来事ですが、その影響は社会の構造的な弱点を映し出します。そこに最も強く表れるのが「女性への支援不足」なのです。
女性の健康・安全・経済基盤を守ることは、個人の幸せを超えて、社会の持続可能性を守るための投資に他なりません。
